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チューナーの針は真ん中なのに合わない。ホルンの音程を”耳”で合わせる方法

どうもごんざです。
18歳のときに母校のB組の合奏レッスンからはじまり、そこから今に至るまで部活動のレッスンは、小学校から大学まで20年以上経験させてもらっていて、個人レッスンは10年ほどしていますが、多くの人が立ち止まるのは、「曲が吹けるかどうか・バランスとタイミング・音程」かなあと思います。
 
前述の2つに関してはひとつひとつどこで立ち止まっているか、どこを修正すれば改善すればいいかは割とわかりやすいですが、音程に関してはそもそも楽器の仕組みの話や、自分がどうこうよりも周りとの兼ね合いもあったり、「ピッチがチューナーの針の真ん中を指していても合奏ではハモらない」こともあって複雑です。正直自分自身も音程攻略ばっちり、というわけでもありません。
 
楽器の仕組みを理解すると他の楽器と音程を合わせることの難しさはよりわかってくるのですが、今回は音程に関しての考え方について書いていきます。

ピッチと音程の言葉の違い

ここは意外と混同しやすいところなので整理しておきましょう。

ピッチとは

1つの音そのものの高さを指す言葉です。
例えば「Fのピッチが高い」と使います。「ピッチが(基準の音と比べると)ずれている」と言ったりもします。

音程とは

2つの音の距離(幅)のことです。
なので例えば「音程がいい・悪い」というのは、『音と音の幅が広い・狭い』ということを指しています。
 
つまり、一人でチューナーに向かって合わせているのは「ピッチ」で、合奏で他の人と合わせるものは「音程」ということになります。
 
音程は絶対的なものではなく、周りの音とのバランスや和音における役割によって常に変化する相対的なものです。

なぜチューナーでは合っているのに合奏では合わない?平均律と純正律の話

ここは意外とごっちゃになっていたり理解があいまいになりやすいところなので、なるべくわかりやすく書くよう心がけていきます。

平均律とは

いわゆる、どの音を吹いてもチューナーの針が真ん中にくるピッチのことを指します。楽器をやっている人が個人個人でいつも合わせているもののこと。
 
ちょっと詳しく言うと、1オクターブを12等分しどんな曲でも演奏できるようにした、ピアノなどで使われるものです。
 
平均律のメリットは「どの調で演奏しても、それなりにきれいに聴こえること」ですが、デメリットもあります。
 
実は平均律でピッチが合っていたとしても、響きが完全に調和する音程からはわずかにずれるので、和音になったときに音が波打っているように聞こえてしまうんです。

純正律とは

一方で純正律は、音の波が美しく重なり合うように作られた音律です。
 
目で見て合わせる「平均律」とは別の、美しいハーモニーが濁りなく溶け合う「純正律」の響き。
 
この純正律の響きがバシッと決まったときは、あの微妙な波打ち(うねり)が完全になくなり、自分の音以上の豊かな響きが空間に広がります。

目で合わせるピッチと、耳で合わせる音程は別もの

正直に言うとぼく自身も含めて、ほとんどの人が普段チューナーを見て音程を合わせています。それ自体は悪いことではなく、自分のピッチの癖を知ったり、基準となる音を体に入れるという意味ではとても大事な練習です。
 
ただ、合奏や本番でチューナーの画面を見ている時間はありません。周りの音を聴いて、瞬時に「高いか低いか」「もっと溶け合わせるにはどう吹けばいいか」を判断する必要があります。つまり、目で覚えたピッチと耳で合わせる音程は、似ているようでまったく別の技術なんです。
 
チューナーで合わせる練習には、基準のピッチを体に染み込ませられる、一人でもできるというメリットがあります。ただその一方で、和音の中で自分の音がどう聴こえているか、周りとどう関係し合っているかは、チューナーの画面には映りません。ここを鍛えるには耳を使う練習が別に必要になります。
 

ホルンの音程の合わせ方が難しいと言われる理由

さて、ここからはホルンのお話。

ホルンは倍音の間隔が狭く、ピッチが取りにくい

ホルンは管が非常に長く(F管は約3.7メートルでチューバとほぼ同じ)、それなのにマウスピースが小さい。そして主に高次の倍音を使って演奏します。

自然倍音は高くなればなるほど音と音の間隔が狭くなるため、ちょっとした唇の締め具合や息のスピード、右手によるベルの塞ぎ具合でピッチが大きく変わります。「狙った通りの正しいピッチを保つ」こと自体が難しい楽器だと言えます。

「チューナーの目」に頼ると「耳」が育たない

だからこそぼくたちはついついチューナーに頼ってしまいます。「今のピッチは高かったかな低かったかな?」と、メーターの針を真ん中に合わせる練習ばかりをしてしまいがちです。

しかし一人チューナーの針を一生懸命真ん中に合わせる練習をしていると、演奏中に「目」ばかりを使ってしまい、「耳」を使うスイッチがオフになってしまいます。いざ合奏の現場に行くとチューナーはありません。普段から耳で聴いて判断する訓練をしていないため、「どうやって合わせたらいいかわからない」状態になるんです。

ピッチが合っていることと、和音が「ハモっている状態」の違い

「私はチューナーでいつも針を真ん中に合わせているから、音程も合っています」は、実は音楽的には成立しません。

音の役割によってピッチを変える必要がある

合奏で美しい「純正律」の和音を作るためには、自分が吹いている音の役割(完全5度や長3度など)によって、あえてチューナーの真ん中からピッチをずらして吹く必要があるからです。

例えば、ド・ミ・ソを綺麗にハモらせる場合、和音の明るさを決める重要な「第3音(ミ)」は、チューナーの真ん中(0セント)よりかなり低めに取らなければなりません。チューナー通りに吹いてしまうと純正律の響きから見れば「高すぎる音」になり、和音は濁ってしまいます。

「波打ち(うねり)」を聴き分け、耳で合わせる重要性

合奏における正しい音程の合わせ方とは、「周りの音と自分の音がぶつかったときに生じる『波打ち(うねり)』を聴き分け、それが消えるポイントを探すこと」です。

音と音の波打ちが激しいほど音程は合っておらず、ゆっくりなほど合ってきており、波打ちがなければぴったり合っている証拠です。この「うねりが消える瞬間」を耳と身体で覚えることこそが、最も重要になります。

これまで「純正律でハモる感覚」を練習するのが難しかった理由

「耳を使って純正律に合わせるべきだ」というのは簡単ですが、実際にそれを個人練習で身につけるのは、これまで非常に難しい(またはめんどくさい)ことでした。

一人では純正律の響きを作れない(という常識)

当たり前ですが純正律の和音は、2つ以上の音が同時に鳴って初めて成立します。一人でいくらロングトーンをしてチューナーを見てピッチを合わせていても、純正律の「波打ちが消える瞬間」や「音が溶け合う快感」を体験することはできません。

そもそもパートに必要な人数がいなかったり、いつも合奏で使っているハーモニーディレクターが使えなかったり、「周りに迷惑かけないかな?」と気にしてしまったり。また、合奏の中で一人ずつピッチを直していく時間もそんなにありません。

まとめ:耳を育てるために

チューナーは「目で合わせるピッチ」の練習には有効です。ですが「耳で合わせる音程」は別の練習が必要です。その違いを知るだけで合奏での聴き方が変わります。

うねりに気づき、それが消える瞬間を探す。その感覚を積み重ねることが、音程を合わせられる耳を育てる唯一の道だと思っています。

 

【レシピのご紹介】
「音程の合わせ方がわからない」という悩める方の声と、ぼく自身が過去に感じた(あの時こういう練習があったらな)という想い。今回そのふたつを形にしたくて、作編曲家・ユーフォニアム奏者の石倉雄太氏と共同で、スマートフォンとイヤホンだけで取り組める、これまでの「ホルニストのためのレシピ®︎」にはなかった音程練習レシピを作りました。

楽譜と専用音源がセットになっていて、うねりを聴きながら自分で音程を探していく構成です。BdurFdurEsdurの基本のオクターブ、5度、3度に対応しています。

ご興味があればこちらからご覧ください。

溶けあう音程の入り口は、こちらです。 Op.172

ホルン版に加え、TpTbEuTu用の楽譜と音源もセットになっています。

 

 

それではまた。