レッスン体験談 / 70代男性 / ホルン

2020年の春から、コロナ禍のため音楽活動が世の中一斉に活動停止となりました。半年くらい停止期間がありましたが、ようやく冬くらいから活動が再開しました。よろこんで楽器を持ってオケの練習へ行きました。しかし、なんと、音がふつうに出せなくなってしまっていました。

例えば五線紙の中ほどの実音 E♭の音を、単に「ポーー」って出すことも出来ない、確率5割って感じだし、音もキレイでは無い、そんな状況でした。

そんな感じのまま、 ハイドンの木管五重奏に挑戦(今考えても 49 点くらいの出来)、ブラ1の3rd に挑戦(とにかく力任せで重苦しくしばしば音外しでやっと吹いていた(吹かせてもらっていた))しつつ一年が経ち、当時すでに70 歳を越えていたので、やっぱりそろそろ引退かなと寂しい気持ちになっていました。ふつうだったらそこでもう辞めていると思います。

でも、自分だけでやってたらダメだ、とにかく指導を受けてみて、努力してみよう、行動もせずにあきらめるのは、ダメだ。

と、チャレンジの気持ちを奮い立たせ(笑)いろいろとネットでホルンの先生を検索してみました。その気持ちが通じたのか、偶然、権左先生のサイトに当たりま した(喜)。今考えてもどうして辿り着いたのか?わかりません。今考えると、私に憑いている守護神のおかげでは無いかと守護神に感謝しています(笑)。

2021年12月のことです。
それで、さっそく、権左先生に問合せのメールをしてみました。その日のうちに返信いただき、「きっと良い音が自由に出せるようになります。高い音もモチロン・・・」というあたたかい権左先生の気持ちが伝わってくる返信でした。

その瞬間ですが、もはや冷めかけていた(諦めかけていた)ホルンへの熱情がさーっと明るく輝く始めるという感じまでは、正直、 無かったです。

まだ、ほんのり望みがあるんじゃないかなくらいの感覚でした。

でも、私自身の躍進は、そこからが、まさに青天の霹靂といったスタートでした。

最初のレッスン

楽器をケースから出してから、まともに音が出るまで(五線紙の中でも)5〜10分は吹いていないと出ない状況でした。

それでもふつうの実音 F(五線の中)がやっとで、それもままならない状況でした。さらにそこから上の実音 Cまでが至難の業でした。ギューギューちからを入れてやっと出る感じというか・・・。

まず、その様子を見ていた権左先生が、「楽器を置いて、息を出してみましょう」と言ってくれて、気持ちがすごく楽になったのを覚えています。権左先生の出す息は「スー」っていうか「シー」とか「チー」ですが、私のは「フー」でした(泣)。そこから違ってました。

 

過去に習った先生のレッスンでは、各運指毎の倍音をロングトーンしたり、音階を吹かせたりして「もっと息をちゃんと吸って」とか「姿勢が悪い」とかってレッスンでしたので、今回もそうかな、と思っていたのがまったく違う内容だったので、(あーこんなレッスンだったら、レッスンに行くのが嫌になるとか苦痛になることなく続けられそうだな)と思いました。

レッスンを受けるためにエチュードをさらったり練習していかないと怒られるのがふつうだと思っていたので。

 

それで最初のレッスンの日、息を出すときの口腔内の状態を徹底的に議論しました。

大昔に、とある有名な先生にレッスンしていただいたとき「発音を舌に頼るな! 息だけで吹く練習をしろ!」と強く言われたことを思い出しました。それを頑なに守ってきた自分のホルン吹奏の歴史を見直すところから権左先生のレッスンがスタートしたのです。

昔言われたとは、息の大切さをご指導いただいたのですが、それはそれで当然。でも、舌を全然使わない奏法はあり得ない、ということに気づかされたのです。

「自分のこれまでの数十年間は何だったんだ」と、怒りの気持ちすら湧いてきてしまいました。

 

以上が、3年に亘る権左先生のレッスンの始まりです。

つまり、ホルンで音を鳴らすためのさまざまな条件と、その組合せを天文学的な世界で、ひとつひとつ分析していく作業の始まりです。

でも、その作業ですが、宝探しのようにすごくわくわくして、発見できたときの喜びは何物にも代え難い素晴らしい自分への贈り物、と3年経った今でも思っています。

それが毎回のレッスンで必ず新しい宝物が見つかるんです(拍手)。権左先生と一緒に見つける作業がレッスンです。

ホルンを辞めないで良かった、もっと続けたいと思う毎日です。

さまざまな宝物発見

権左先生のレッスンは、すでに50回に近づいています(拍手)

毎回、宝物が見つかっていますから、50個の宝物を発見した歴史と言えるでしょう。

それをひとつひとつお話しすると、キリが無いくらい出てくるので、大切な宝物というか、 宝物探しの旅の様子について、少しお話ししてみたいと思います。

0 教則本の一番最初の楽譜(音符)が、まずはスタートだ。これが正しく吹けないと、先に進んでも意味が無い。(実音 F の全音符)⇔ 早いパッセージや高度な跳躍がホルンの練習のメインでは無い。(あらためて再認識した、発音の瞬間に全身全霊を注ぐのだという教え)

1 発音には、舌をうまく使うことが大事だ。タンギングで「Tu~」という発音も舌を使うのは当たり前だが、そんな単純なことじゃなくて、息を楽器に送り込んでいるロングトーンの最中に『舌がどういう役目を果たしているか?』が重要だ。

2 中音域はどんな吹き方でも鳴るが、高音域はそれぞれ奏者に合った吹き方でないと鳴らない。その吹き方を探すのだ。それが見つかれば、楽にキレイな音が出せる。

3 肺から喉を経て舌の奥から口先までの、息の通り道にどうやって息を通すか?どのような息を通すか?が重要だ。

4 右手の使い方も大切だ。右手の入れ方や形によって、楽器の中(気柱管)の様子が変化する。出したい音にあった右手の位置/形を探すのだ。

5 リムと唇がどのような関係で接しているか(中央/左/右/上/下)は、ルールは無い。とにかく自分にあった位置が必ずある。それを探すのだ。

6 カラダの中には、無数のコビトさん達が居て(笑)彼等が、一生懸命自分たちの仕事をすることで、ホルンの音楽が実現する。

自分の場合、ほとんどのコビトさんたちが失業していた。(例えば、舌に所属するコビトさん集団/アパチュアに所属するコビトさん、集団/口輪筋に所属するコビトさん集団などなど)

7 彼等(前述のコビトさんたち)は、本来の自分たちの役割を全く演じたことが無いので、 超初心者! だから直ぐに本来の役割を演じきることは無理。一緒に育てていくしかない。地道に。そういう初心者のコビトさん軍団と、GOAL 目指しての大行軍が始まった。

8 さらにコビトさんたちの、相互のバランスが重要だ。まさに無数のコビトさんたちが、それぞれの役割を全体の相互バランスの中で、正確に自分たちの役割を演じることが大切だ。

コビトさん同士で喧嘩しちゃだめだし、仲良くし過ぎてもだめ、難しいけど、バランスが見つかったときの喜び(と、飛躍的上達)は何物にも代え難い(実感)。

9 (陸上競技選手の為末さんの持論)自分がやっている客観的身体の動きと、自分がそのとき頭で描いているイメージとを、合致させることが重要だ。こういうイメージのとき実際はこう動いている、という関係が掴めると飛躍的に進歩する。まさに、これだと思っています。

10 声楽家とのコラボレーションの世界も旅した。権左先生と一緒に体験&研究分析した。 すごい発見や驚きがあった。

レッスン模様

普段の権左先生とのレッスンの様子はこんな感じ、というのをアトランダムに書いてみたいと思います。

・日々ホルンを吹いている状況下で、今、一番悩んでいる(上手く吹けない)ことについて、 権左先生と一緒に分析して、結果を出すという作業時間という感じ。

・計画的に、エチュード何番をいつまでにさらってきなさい。ロングトーンを必ずやって、 その日の調子を見る。とかふつうのホルンレッスンとは、全く異なります。

・私の場合、レッスン室の譜面台に楽譜を置いてそれを題材にレッスンしていただいたのは、おそらく1~2回しかありません。譜面台には、白板とマーカーを置いて(必ず)そこに口腔内の様子とかを描いて議論するって感じの流れです。

・必ず権左先生は、私の吹き方をやってみてくれます。たしかにヘンな音になります(笑 /泣/汗)それを正しい吹き方に直して、どこをどうやったのか?細かくしかも納得行くまで説明してくれます。

それを私がやってみて、ちょっとでも改善すると、瞬発「メチャ良い 音!!」って叫んでくれます。あ、自分でも良い音出た!!の瞬間です。

それを身体に叩き込んで、そして合奏練習で実践することが次のステップですが、なかなか再現性が出ません。

でも、レッスン中にちょっとでも実際に出たという事実がそこに確実にあるので、それが糧となり日々のチャレンジの原動力になり、確実に上達している実感がそこにあるので す。

・3年以上の分析研究の研究室といった感じの権左先生と私のレッスンです。もう細部に渡って、すみずみまで私の(前述の)コビトさん集団がどういう動きをしているかわかっているので、例えば「あ、舌のコビトさんと唇のコビトさんがちょっと合わなかったね」って感じでツーカーの世界です。そういう関係だから、通じるヒントもたくさん積み重ねがあり、 それも宝物です。あ、そこのところ疎かにしていた!とか・・・。

その他(まとめ)

私は定年退職後に大学院で心理学を学び、心理カウンセラーの世界で仕事を進めている人間です。

そもそも高齢者ですので年齢的なものもありますが、人と人との関わりは、次の様な考え方であるべきだと考えています。

 

それは、全ての関わりが対等の関係であるべきだ、と言うことです。

 

上から目線とか、特権階級の振る舞いとか、そういう態度は良くないと考えています。社会の中では、あらゆる人たちが相互に関わりの中で暮らしており、仕事をしています。

そこには、一定の権利と義務がともなっていますが、それぞれの責任の範囲に置いて行動すべきであると思います。

 

指導者と生徒は、ふつう指導者が上位で生徒が下位という認識ですが、上から命令するとか、立場を利用した行為は良くありません。

生徒が出来ないことがあるから指導を受けるためそこに来ているのですから、出来ないことを出来るようにしてあげる(指導者は出来ることをその方法を教える)のが務めです。

そこに上下関係はありません。

権左先生は、心理学的に言うと「傾聴レッスン」です。真にそう思います。傾聴というのは、完全に白いキャンバスを想定し、まず相手のこころの声を聴き、そしてそれを真っ白いキ ャンバスに投影するという作業です。そこに聴く立場の人間の思いとか感情を色づけてはなりません。

こーしろ、あーしろ、って言うことは全くありません。毎回のレッスンは必ず、生徒の悩みを聴くところから始まります。

ですから、権左先生のレッスンは、「今、ホルンをどういう気持ちで吹いているか?」そこが出発点になりますから、いきなり楽譜を出してこれを吹いてみろ、とか、基礎練習と言って、 各指(管の長さ毎)で倍音列のロングトーンを順番にやるとか、そういう練習ではありません。

そういう意味では、すごい効率のよいレッスンということも言えると思います。

現在(2025 年春)までの成果

2021年12月からいままで3年を超えるレッスンを受けて来ました。まだまだこれからも ずっと継続してお願いしたいと思っています。

 

最後に参考までに、つたない私の現状ですが、一応書いてみました(汗)。

1 チャイ5のSolo
2 パバーヌの冒頭 Solo
3 B♭dur~Fdur :2 オクターブの音階(p~f)

これらが、ふつうに楽に吹けるようになって来ました。

また、現在の自分が抱えている課題は、恥ずかしながら次のような感じです。

1 タンギングスピード向上

2 超LOW音域の吹きこなし

3 旧体質が時たま(合奏練習で)現れてしまうこととの闘い(せっかく培った新奏法が発揮できない場面が出ないようにする)

4 木管や弦と溶け合うホルン本来の音やフレージングの追求(音程と音価の設計と実現)

5 ホルンが入ったことで、音楽の広がりや芳醇さが格段に向上する世界の追求 そのようなことが可能な奏者となることを目指しています。

 

以上、私が権左先生のレッスンを受けて来て 50 回目を迎えるにあたり、思っていることを書き留めさせていただきました。

あらためまして、これまでの数々のご指導とご好意に感謝申し上げます。

ありがとうございました。