フリーランスの音楽家が体験した不払いクライアントとの強烈な出来事

どうもごんざです。 フリーランスで活動していて、何度かギャラの不払いに遭ったことがあるのですが、今日はその中でも強烈だった話をします。

何年も前の話になります。 事前の話とまったく違うギャラを仕事後に渡され、そこで屈せず相手先に立ち向かったところ、いくらかは戻ってきましたがその仕事呼ばれることは2度となくなった。そんな話です。

仕事内容は音楽祭のアウトリーチ

仕事の内容は、木管五重奏の編成で30分ステージを1日3回、ある音楽祭のアウトリーチをホール周辺施設でしてほしい、という内容のもの。

この音楽祭は当時音楽祭としての歴史は浅いものの、国内外から著名な音楽家が集まって開催されていたものでした。

 

その時点でこの仕事の依頼を受けるのは2回目でした。 1回目に依頼を受けたのは、7日間の仕事の依頼をもらう3ヶ月程前、2泊3日の日程で、「ギャラは出ないがその分必要経費はすべて依頼主側で持つ」という条件でした。

ごんざ
(ギャラ出ないのか。。)

とは思いつつ、大学卒業したてで音楽の仕事もあまりありませんでしたし、経験もつめるだろうし、泊まりの仕事ってだけで楽しかったので引き受けたのでした。結構楽しかったのを覚えています。

アウトリーチ(Outreach)とは もともと「手を伸ばすこと」という意味の言葉ですが、「(公的機関や奉仕団体の) 出張サービス」という意味でも用いられます。さらに文化芸術では、劇場・音楽堂等など芸術を鑑賞する場から手を外に伸ばしていく芸術普及活動の意味で使われ、アーティストを学校や福祉施設などの派遣や、施設にとらわれないミニ・コンサートや参加体験型事業の実施など館外活動のことを指します。 出展:全国劇場・音楽堂等総合情報サイト 

そして2度目の依頼

ノーギャラだけど経費はすべて依頼主持ち、という条件で引き受けた仕事からしばらくして2回目の依頼。今回は7日間。

メールで仕事の依頼を受けたときに、ギャラの提示が2万円/日と記載されていました。今思えば契約書がなかったのがそもそもおかしかったのですが、クラシック音楽業界では契約書を交わさない仕事も多いので、別段不審に思うことはありませんでした。

単純計算で2万円×7日=14万円ですから、当時のぼくにとって大きな仕事でした。

 

前回、仕事内容の面で、1日3回の演奏に加えて移動などもメンバー自身で行っており、かなり過酷な仕事だということがわかっていたので、(前回の仕事が認められたんだな)と素直にうれしかったです。

いざ仕事がはじまって合間合間に出費はあるものの、(まあ14万円もらえるわけだし)と当時のメンバーはみんな思っていたと思います。

運命の最終日

すべての業務が終わり最終日、帰路に着く前に依頼主の方と会いました。

依頼主
7日間お疲れさまでした!本当にありがとうございました。

そう労ってもらい、依頼主の方が一人一人に封筒を渡してくださいました。

ごんざ
(14万円を手渡しとかすごいなあ)

なんて思いながら受け取るとどうも封筒が軽い、薄い。

「あれ?」と思いながら封筒をのぞいてみると、中に入っていたのは2万円。

この時点では(とりあえず今日の分てことなのかな)と思い、一応聞いてみました。

ごんざ
事前のメールでは「2万円/日」と記載していましたよね?
依頼主
え?1日2万円なんて出せませんよ?

 

!!!!!

 

1日2万円なんて出せませんよ。 1日2万円なんて出せませんよ。 1日2万円なんて出せませんよ。 1日2万円なんて出せませんよ。 1日2万円なんて出せませんよ。 1日2万円なんて出せませんよ。

 

・・・。

ごんざ
なんだろう、おかしい。疲れてるのかな。今「1日2万円『なんて』」って聞こえたぞ

 

計算しちゃうと、7日間で2万円=2,857円/日 2857円/日÷3回本番=952円(1回本番)

本番1回952円。

折衷案を提案されたがしかし

何か様子がおかしいぞ。と依頼主が気づき、会社の上司に相談してしばらくしてから発した言葉もまたインパクトのあるセリフでした。

依頼主
もう2万円までなら出せます

 

もう2万円まで「なら」

 

ごんざ
(依頼主さん、「なら」じゃないよね。それになぜ上から目線なんだ…

これは明らかにそちらのミスでこっちはゴネてるんじゃない。もともとの約束の話をしてるんだ。

それを「2万円までなら」って一体…)

 

追加で2万円でも合計4万円。 1日あたり5,714円。

この時点で怒った1人のメンバーが引き止める間も無く、顔を真っ赤にして何も言わず帰ってしまいました。

その後話し続けるもその場では、それ以上話ができない、ということでその日は解散になりました。

その後、帰路の記憶がまったくありません。きっと茫然自失だったのでしょう。そりゃあそうですよね。日給2万円ではなく、全行程で2万円だったんですから。

ぼくとしてはここで引き下がれるわけがありませんでした。

抗戦

その後の話で5人のメンバーのうち3人は、7日間で4万円のギャラでOK、ということになりました。

残った2人は、ぼくと当日帰ってしまったメンバー。

ここで引き下がれるわけないですよね。ということで何か手はないかと探していたところ、「音楽ユニオン」という団体の存在に行き着きました。

音楽家ユニオンとは 音楽家の社会的、経済的地位の向上と音楽文化の発展のための活動を続けて特にNHK、民放、レコード協会などとの間で出演料の取り決めを行っているほか、オーケストラにおける労働条件の改善においても大きな成果をあげています。 出展:日本音楽家ユニオン

とりあえず相談してみようと電話をかけ、実際に事務所に出向いて話を聞いてもらいました。

音楽家ユニオンに相談

音楽ユニオンの方は、どこの馬の骨ともわからないぼくらの話を真剣に聞いてくださり、履歴にあった依頼のメールを見せ話したところ、音楽家ユニオンの方が教えてくださったのは、

  • メールでも十分証拠になる
  • 【謝礼:2万/日】と明記してあれば、1日2万円ということに取れる。相手方は支払うべき
  • 口頭で言ったことだけでも証拠に使える
  • 音楽家ユニオンに加入すれば、今後は音楽家ユニオンが相手方とやり取りしてくれる
  • 場合によっては裁判にも持ち込める

ということでした。 最初のメールに【2万円/日】と記載があったのは依頼主側のミスだったようなのですが、こちらにはそんなこと関係ありません。

2人はその場で音楽家ユニオンに加入し、その後の対応を依頼。

 

これで一安心、と胸をなでおろしたのですが…。

抗戦後の反動

最終的に、戻ってきた金額は5万円でした。最初にもらった2万円プラス5万円で7万円。

1日1万円にはなりました。

正直予定の半分で不満でしたが、その時点でもう仕事から半年過ぎていましたし、音楽家ユニオンの方にも

ユニオン
これ以上は裁判になります。そうするとお金もかかるし、長引いて消耗します。ここらで手を打ちませんか

と言われたので、そこで不払いに関してはあきらめました。

ここまでこちらに非はありません。いただく予定だったもののために動いていただけです。

 

その後、アウトリーチの仕事自体は続いていましたが、音楽家ユニオンに駆け込んだ2人が仕事に呼ばれることは二度とありませんでした。そして7日間で4万円という提示をのんだ他の3人のメンバーは引き続き呼ばれていました。

その上、主催者側が著名な音楽家と親しかったこともあり、当時もう大学は卒業していましたが大学側にも話がまわっていて、何か用事があって大学に行くと

親切な誰か
◯◯先生が音楽祭の件で怒ってるらしいよ。謝りにいった方がいいんじゃない
と言われることが何度もありました。

もちろん一度も謝りに行っていません。

おわりに

フリーランスで仕事をしていてギャラの不払いというのは本当に深刻な問題です。だけど現状泣き寝入りすることが多いでしょう。

これからの仕事に関係するかも、、。 紹介してくれたあの人の顔に泥を塗るわけには、、。 お金じゃないよね、経験だ!

こんな感じで自分を納得させて終わりで本当にいいんでしょうか?

実際ぼくはその仕事に呼ばれることはその後一切ありませんでしたが、それでよかったと思っています。

 

フリーランスの音楽家に何かあったときのために覚えておいてほしいのは、

  • 困ったら一人で悩まず音楽家ユニオンに相談
  • お金は全額ではないかもしれないけど戻ってくる可能性は高い
  • 口頭での発言も証拠になる
  • 文面ならなお良し

この4点です。 この経験が誰かの役に立てば幸いです。

 

それではまた!

 

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