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管楽器奏者と金属アレルギーの関係 ー対策と対処編ー

金属アレルギーに関する記事第3弾です。

管楽器奏者と金属アレルギーの関係  ー金属アレルギー検査編ー

管楽器奏者と金属アレルギーの関係 ー楽器やメッキに使われている金属編ー

自身が金属アレルギー検査を受け、金属アレルギーであることが発覚したことをこれまで書いてきました。まだまだ試行錯誤中ですが、実際に試してみたり、調べていく中でわかったことを今回書いていきます。

金属アレルギーへの対策

ここで紹介するのは、

  • マウスピースの素材自体を、アレルギー反応を起こさない金属素材に替える
  • 既存のマウスピースにアレルギー反応を起こさないであろう加工をする
  • 可能性を減らす

この3点です。

素材を替える

金属を使わない作戦です。
愛知県に木製のマウスピースを作成している工房がありました。現地に赴けば実際に試奏出来るそうです。マウスピースは金管全般と、サックス。インターネットからの注文もできるようですが、実際に吹いて決めた方がいいと思います。

ART工房Nob

オークションなどで検索するといくつか出ていることも多いです。

樹脂

有名なのはヤマハの練習用マウスピースですね。
購入して試しましたがぼくとしては吹きずらく、実際に演奏で使えるレベルではないように感じました。

演奏サポート用品ーYAMAHAー

ホルンで樹脂製のマウスピースはもう一つケリーと言うメーカーが販売しています。こちらは渋谷のブラス プロ|NONAKA MUSIC HOUSEに在庫があったので実際に行って試奏してきました。

クリア→MC カップ内径16.76mm カップの深さ Medium
ブルー→DC カップ内径17.01mm  カップの深さ Deep

2種類のサイズのマウスピースの在庫が当時ありました。
ホルトンのマウスピースをモデルに作っていることもあってか、ヤマハの練習用マウスピースに比べて格段に実用性が高く感じました。ですがなにせ内径が小さい。ぼくは普段内径が17.9mmのマウスピースを吹いているので小さすぎました。

内径が小さいことを無視しての感想ですと、中音域や低音域はよくでますが、高音域に差し掛かるとツボがなくなるように感じました。

在庫がブラスプロになければ本家のサイトで注文するか、こちらのサイトから注文できます。色がたくさんあるので楽しいです。

ブルーだとちょっと目立ちすぎますね。

左からケリーのDC、MC、今使っているストーク、ヤマハの練習用マウスピース。

ホルン以外の金管楽器の樹脂製マウスピースでしたら、以下のサイトでも販売されていました。

Brand・マウスピース -革命的な樹脂製金管マウスピース-

ステンレス

あまりマウスピースとしては聞き馴染みのない金属ですね。タンブラーやヤカン、キッチン周りの製品などに使われることの多い素材です。

ステンレスとは

ステンレスは英語でstainless steelと言い、直訳すればステンレス鋼となり、これが日本での正式名称となります。stainlessとは「さびない」と言う意味です。厳密には「さびにくい」という意味も含まれます。

ステンレスは鉄(Fe)を主成分(50%以上)とし、クロム(Cr)を10.5%以上含むさびにくい合金

引用:ステンレス協会

鉄とクロム以外に、ニッケルが含まれる場合もあります。

日本のサイトではこの素材のマウスピースを販売しているお店が探した限りでは見つかりませんでした。

以下海外のサイトになります。

KELLY

GIDDINGS

試奏できないのが難点ですが、クロム、鉄、ニッケルにアレルギー反応の出なかった方には、選択肢の一つとしてあってもいいかと思います。

チタン

チタンはアレルギーがもっとも起きにくい金属として知られています。

トランペットのマウスピースですが、純チタン製のマウスピースが販売されています。

BEST BRASS

リムだけ樹脂製のものにする

最近は金属アレルギーの人用に、リムだけ樹脂製のマウスピースがあります。

バック : トランペット ルーサイトリム マウスピース(プラスチックリム)

Bob Reeves

また、アトリエモモでは、既存のマウスピースのリムをねじ切って、リムをデルリンという樹脂製のリムに作り変えてくれます。(2019年4月から体制が変わったそうなのでリムを変えられるかどうかは改めて問い合わせてみてください)

素材を加工する

既存のマウスピースを反応のでないであろう加工をするいくつかの方法を紹介します。

アレルギーに反応しないメッキ加工をする

メッキに含まれる金属について、管楽器専門店ダクのサイトにわかりやすい記載がありましたので転載します。

  • ホワイトゴールド  12K/金と銀の合金
  • ピンクゴールド   18K/金と銅の合金
  • グリーンゴールド  18K/金と銀の合金
  • シャンパンゴールド 22K/金とニッケルの合金、金属アレルギーの方には
  • フェリックゴールド 23.5K/金と鉄の合金、金属アレルギーに有効な場合あり
  • ピュアゴールド   23,5K/金とコバルトの合金 特別指定がない場合の普通の金メッキ

引用:管楽器専門店ダク

金属アレルギー検査を受けた後、自分が反応する金属が含まれていないメッキをかけるための参考にしてください。

純パラジウム

はい、どこからでてきたの、という感じですがぼくは今後時期を見てこちらの金属のメッキを楽器に施す予定です。メッキに詳しい方に相談していたところ、こちらのメッキをオススメされたのです。

マウスピースにこのメッキをかけた話を聞かないのですが、木管楽器ではキーにこのメッキをかけることがあるそうです。

このメッキをマウスピースにかけることができるかどうか、楽器店に問い合わせて聞いてみました。

・ヤマハ銀座店
納期3週間
費用18000円
マウスピースにかけたことがなく、専用の金型づくりからするので高額になる。

・管楽器専門店ダク
純パラジウムメッキ、これまでやったことはないけどできる。ただ硬い金属のためひび割れが起きやすい。
納期は3-4週間
料金20000円

預ける期間が長いため、時期を見て加工しようと思っています。

アレルバスター加工

金属アレルギー専門店で、マウスピースをアレルバスター加工をしてくれるところがあります。

管楽器マウスピース 金属アレルギー防止コーティング

トップコート

※こちら自己責任でお願いします。

ネイルカラーの仕上げに使われるトップコート。
楽器店の方からおすすめされて半信半疑でマウスピースのリムに塗ってみたのですが、ぼくは効果がありました。実際に金属アレルギーの可能性が高い人にも試してもらったところ、改善されたこともあります。

トップコートには樹脂が含まれているので、金属との接触を防いでくれるようです。

ぼくが実際に使っているトップコートはこちら。

2度重ね塗りをして使っています。塗った直後はシンナーのにおいがかなりするので、風通しのよいところで乾かすことをおすすめします。

乾くとマウスピースがコーティングされるので、口当たりが少し変わり、厚みにも変化を感じます。が、演奏に支障はありませんでした。

薄いコーティングですので、爪で引っ掻いたりどこかに少しひっかけると剥がれてしまいますし、それでなくても使っているうちに薄くなっていくので、週に一度くらいの頻度で塗り直しています。

金属成分が唇が触れる可能性をできるだけ減らす

マウスピースにできる限りの加工を施した、だけど改善されない。そんな場合に以下の可能性も考えられます。これから紹介するのは、実際にぼく自身気をつけていることです。

ぜひ試してみてください。

手で拭わない

以前の記事で紹介しましたが、金管楽器には金属アレルギーに関係ある素材が多く使われています。楽器を演奏していれば当然そこに手が触れることになりますよね。

ぼくはマウスピースを手でふくクセと、楽器を触った手で口を拭うクセがありました。金属を触った手でマウスピースに触れる、金属を触った手で口を拭う。どちらも金属成分が口に触れることに関係がありますから、避けるべきです。

逆流してくる水に気をつける

特にホルンの人は経験があると思いますが、楽器を椅子などに置いておくと、管内に残っている水分が逆流してマウスピースから水が出てきますよね。

楽器の管内は楽器の外側よりも金属の成分がしみ出しやすいです。そのしみ出た金属成分が水に含まれて逆流してマウスピースに付着する。その水がマウスピースにつき、それをそのまま唇につけ演奏したら…金属の成分と唾液が出会ってイオン化することは十分に考えられます。(実際に詳しい方からこの可能性も示唆されました)

こまめに拭く

これらに対しての対応としては、「こまめに拭く」ことです。

ここでも気を付けてほしいのは、楽器を拭いたタオルやハンカチで口をふかないことです。これでは媒体が変わっただけで同じことですよね。口を拭くものは口を拭くもので用意しておきましょう。ぼくはそうしています。

おわりに

残念なことに、マウスピースを完璧に加工しても、どれだけ気を付けて対策を講じても、アレルギーを完全に防ぎきれるわけではありません。

というのも、金属アレルギーに関して情報を集めていた時に見つけたのですが、

不本意ですがKELLYのプラスチックのマウスピースを買いました。
金属よりはマシなものの、長時間吹き続けると、やはり腫れてきてボロボロになりました。
「プラスチックやのになんでやねん!!!」
と思って医者に相談すると、「触れている手」「吸う息」と体が発する汗がイオンを発生させ症状が起こるそうです。

引用:GOUSHI NISHIZAKI official web

こういった可能性も考えられるからです。

ただ、どれもこれも試してみる価値はあります。
この記事を読んでくださっているあなたがもしも金属アレルギーで、自分の能力と関係ないところで演奏に支障をきたしているのだとしたら。

ほんの少しの工夫と手間で、これまでよりずっとのびのびと演奏できるかもしれないのです。

現在、ぼくはまだマウスピースに純パラジウム加工できていませんが、マウスピースのリムにトップコートを塗り、可能性を減らす工夫をすることで、ずいぶん状況が改善してきました。

金属アレルギーの検査を受けて自身が金属アレルギーであることを知るまでは、度重なる唇の腫れや不調を(自分の能力不足なのか)(練習が足りないのか)(やり方が悪いのか)などと自分をいつも責めていました。でも実は自分のせいではなかったのです。この事実にどれだけ救われたことか。

この記事を通して、少しでも誰かのお役に立てれば幸いです。

それではまた。

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