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金管楽器奏者が大きな音量を出すために知っておきたい6つの知識とその使い方

合奏で「もっと吹いて」と言われたことありませんか?

言われた後「それじゃ足りないよ!」「変わってないよ!」と続けて言われてもやもやしませんでしたか?

ぼくは中高生の頃散々言われましたし、もやもやもしました。

でいつも、

(こんな吹いているのに)
(どれだけ吹けばいいんだよ)

と思っていたし、無理に吹くから体は力みで痛くなるし、その割に音量は出ないしバテるし…。

当時はわかっていませんでしたが、その時のぼくには大きな音を出すための奏法の引き出しが圧倒的に足りませんでした。

「もっと吹いて」と言われて自分がその要求に応えようとして実行するのは、息を吐く量を増やすことばかり。

 

今思えばそれでは全然不十分なんです。大人になってから「もっと吹いて」は高度な要求であることも知りました。

大きな音を出したいのにどうやったらいいかわからないことにも、要求に応えられない自分にも嫌気がさしていた過去の自分に宛てて、今日は書きます。

 

大きな音を出すために必要な奏法の引き出しは6つあります。そしてこの6つのバランスがとれたとき、結果的に楽にその楽器らしい大きな音が出ます。

 

タンギング

金管楽器のタンギングは、舌で息をせき止め、その後舌を解放することで息が勢いよく流れ出て発音が明瞭になる一連の流れを言います。(関連記事:金管楽器奏者の音の出だしのタンギング大きな音を出すにはまず、このタンギングが非常に重要。

大きな音を出すには強いタンギングが必要だからです。

ぼく自身は学生時代には考えたこともありませんでした。当たり前にやってる人は読み飛ばしてくれて構わないけど(強いタンギング?)と思った人はぜひ参考にしてみてください。

強いタンギング

強いタンギングは、タンギングの一連の流れの中で、出そうとしている息を強め、その強めた息をせき止める舌にもそれに応じた力を加え、その後解放することで実現できます。

まずは楽器を吹かずに息だけで強いタンギングを試してみましょう。最初は少し力みを感じても構いません。

 

ちょっとわかりにくいな、と思う人は、レンゲですくったラーメンのスープを冷ますくらいの息を吐いているところを舌でせき止めてみてください。せき止めた後も息を吐こうとし続けるのです。

こうするとその息を出ないようにするには舌の力は増えますよね。その後舌を離して息をだしてあげてください。

それ、強いタンギングです。

口の周りの必要な力み

強いタンギングができるようになると、瞬時に大量の息が出せるようになります。ですがただ強いタンギングをし、大量の息を出すだけだと、ほっぺたはふくらみ、息の出口はとっても大きくなってしまいますよね。

これではそのまま楽器をつけて強いタンギングをしても、音量アップにはつながりにくいです。

そこで口の周りの力が必要になります。

口の周りの力を感じるために

まずは楽器を使わず、口を「ウ」または「トゥ」または「テュ」の形にしながら強いタンギングをしてみましょう。

ただ大量の息を出した時に比べて、息がまとまりませんか?

その時の口周りの力の使い方が大きな音を出すために必要な力にとても近いです。

これを「力み」と表現するか「固定」と表現するか「寄せる」と表現するかは人それぞれになりますが、特に唇の端の口輪筋がキュッとし、唇の厚みが増す、のが必要になります。

圧力の高い息に応え、マウスピースをくっつけ続ける

「マウスピースを押し付けて吹いて」

これだけ聞いて素直にマウスピースをいつもより押し付けて吹くと、痛みが生じたり、音が薄っぺらくなったり、バテやすくなったり、歯が痛くなったり、場合によっては唇が傷ついてしまうこともあるかもしれません。

しかしこの記事通り順を追って試してくだされば、この段階でマウスピースを押し付けて吹く、が必要になります。

 

ここまでの一連の流れで、

・強いタンギングをする

・強いタンギングによって発生する大量の息を、唇の周りの使い方の工夫でまとめて出す

とできるようになってから楽器をつけて吹くと、今まで通りのマウスピースのくっつき具合だと、息の圧力に負けてマウスピースが唇から離れるように感じるはずです。

ここで「マウスピースを押し付ける」が必要になるのです。

圧力の高い息が口から放たれて、体と楽器がしっかりとマウスピースでくっついていると、効率良く大きな音が出やすいです。そのために大きな音を吹く際は、通常時に比べてマウスピースの押し付けが必要になります。

口の中の形

音量を大きくしようとすると金属的な響きになってしまうから、それを防ぐために口の形を縦長する、こういったやり方を選んでいる奏者によく出会います。

ですがそもそも、金管楽器は音量が大きくなれば音の質は変わります。やわらかいまま大きな音は出ません、どうしても金属的な音色になっていきます。なのにその音の変化を防ごうとして極端に口の中の形を縦長にすると、ロスに繋がってしまう、とぼくは考えています。

 

大きな音を出すに当たって圧力の高い息を出そうとすると、口の中は自然と広がろうとします。それを、広くなりすぎず、なるべく今まで通りの口の形で吹けるよう維持する力が必要になります。

狭くするのではなく、広くなろうとするのに任せるのでもなく、広くするのでもなく。

広くなろうとするのを狭くしようとする力(拮抗)によって、少しは広くなるけどもなるべく今まで通りの口の中の形で吹く。これが大きな音を吹く際に必要になります。

息の出口の大きさ

大きな音を吹くにあたって、息の出口の大きさはどうなると思いますか?

小さくなる
変わらない
大きくなる

ケースバイケースと言われればそれまでですが、基本的には通常の音量で吹くときと比べたら息の出口は大きくなります。息の出口の大きさが変わらないまま、息の量だけ増えるとピッチがだいぶ変わってしまうからです。

これに関してはバジル・クリッツァーさんのダブルパラメーター・エクササイズという記事が非常にわかりやすいです。

息の吐く量

強いタンギングができるようになり、それを口の周りの力みで息をまとめられるようになり、息圧に負けないマウスピースのくっつけを使い、口の中の形の変化、息の出口の大きさの理解も進んだ上で楽器を吹くと、きっと息が出にくく感じるはずです。感じなくてもちょっと詰まったような音になってしまうことがあると思います。

そこで息の吐く量を増やす、の登場です。

最初から息の吐く量だけ増やすとうまくいきませんが、息の通り道と息の通し方をわかった上で息の吐く量を増やすと効果があることが多いです。

順番大事。

おわりに

・たかだか大きな音を出すためにこんなに難しいこと考えなきゃいけないの?

・別にそんなこと知らなくても吹けるし。

・考え始めたらわけわからなくなった。

 

いろんな考えがあるかと思います。
細かく「◯◯してみて」と言われると考えすぎてできなくなる人もいます。

ただ、今回の6つのポイントは、自分自身がこれらを知ることで大きな音が出せるようになりましたし、これまで大きな音が思うように出せず悩んでいた何人もの奏者の演奏が改善した経緯があり、書きました。

奏者がどこまで奏法を理解していて、その中から何を使おうとしているのか、実際にはどんな吹き方をしているのか。人によって様々ですが、音量で悩んでいる奏者の方の中で(これは考えたことなかった)が一つでもあれば、何か役立つのではないかと思い、書きました。

 

あまり考えずとも「大きな音だそ」と思って思い通りの音出るなら、それが1番。

 

ですが、数学では公式を習うように、スポーツではルールを覚えるように、楽器を吹く上での仕組みを知る段階もあるとぼくは考え、実践し、人に伝えています。

大きな音が思うように出ずに悩んでいる人が、仕組みを知った上で大きな音が出るようになると、演奏は様々な部分が協力し合ったバランスの上に成り立っており、結果的には今まで苦労していたより、かなり楽に吹けることがわかるはずです。楽に吹けるという感覚は、楽をしているわけではないことも。

 

この記事が大きな音が出せずに悩む人に、少しでも役に立てば幸いです。

 

 

 

それではまた。

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