音階練習を上行形から吹くか下降形から吹くかで口の動きと音色とピッチが変わってしまうトランペット吹きとのレッスン

練習メニューにスケール練習を取り入れている人、多いと思います。

その際どんなパターンで、どんなことを考えながら吹いているでしょうか。

スケール練習は、上行形からはじめるか下降形からはじめるかで、吹きやすさやピッチ、音色が変わることがあります。

今回は、音階を上から下降してきて吹くのと比べて、音階を下から上行して吹くと口がたくさん動いてしまい、上った先の音のピッチもぶら下がってしまう、と悩むトランペットの吹きの例を紹介します。

傾聴

まず最初に下記の音域のB♭durを吹いてもらいました。

譜例①

 

 

その次にこの音階の最高音からはじめるパターンで吹いてもらいました。

譜例②

吹き比べてもらうと、音階を上行形から吹くのと下降形から吹くのとでは、口の動き方や音色、ピッチが違います。

本人に「これに気づいてどのような取り組みをしていますか?」と聞くと、

「口が動いてしまって上がった先のピッチがぶら下がってしまうのは低い音からはじめる上行形の時なので、譜例①のように音階を下の音から上行形で吹き、口が動かないように意識しながら取り組んでいますが、うまくいきません」こう教えてくれました。

問題を感じる方を重点的に取り組む。
なるほど。取り組みとしてはわかる気がします。

音階を2パターン吹き比べてもらった時点でわかったことがありました。譜例①のパターンで演奏した場合の下のB♭を吹くときの口と、譜例②を演奏した場合の下がっていった先のB♭ときで口が違っていたのです。ぼくはそこがポイントではないかと思いました。

低い音意識しすぎて用意しすぎてしまう問題

本人にも上記太字の部分を伝え、もう一度吹いてもらいます。最低音の吹き方が違うことをわかってもらえました。

吹きやすい音域内での音階練習の場合、最低音は(ちょっと低いな)と感じる音域であることが多いです。その場合、(低い音しっかり出さなきゃ)と口を低い音用に準備しすぎてしまうことがあります。

音階の最低音を準備しすぎた口で吹きはじめた場合、出だしは鳴りやすいですが、通常よりも過剰に準備をしているので音階を上っていくにつれ、吹きにくくなっていきます。

 

今回の場合、低い音用の口を準備しすぎた状態で吹きはじめ、音階の1番上の音まで到達はできていますが、結果としてたどり着くまでに口を多く動かす必要があり、ピッチがぶら下がってしまったり、音色がひずんでしまったりという影響が出ていたのでしょう。

このように音階のはじまりの音でつまづいている今回の場合、いくら口を動かないように演奏しようと気を付けても、開始音の吹き方をつかめていないので、うまくいきにくいです。

そこでこういった提案をしました。

  1. 自分でコントロールできる練習時間内の音階練習では、しばらく譜例②の形で取り組んでみる
  2. 下降形の音階に慣れてきたら、下降形からはじめ最低音までいったところで一旦口からマウスピースを離し、再度最低音から音階練習をスタートしてみる

2は譜面にするとすればこんな感じです。

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1ヶ月後。
提案を練習に取り入れたところ、状況が改善されたことを教えてくれました。そして話題は別の話になっていきました。

 

おわりに

問題を感じて集中的にそこに取り組む。素晴らしい心がけです。

ですが今回の場合は、音階練習での上行形のみで奏者の悩みが起きていました。それなら下降形をもとに練習を組み立ててはどうか、というわけです。上行形から音階練習を吹く際、最低音で音が下がりきらずピッチが高くなったり、音色が上ずる傾向があることだけわかっておけば、なお効果が見込めます。

音域や奏者の傾向よっては下降形を重点的に取り組んだ方がいいパターンもあるかもしれません。悩みに応じていろいろと工夫してみてくださいね。

 

 

それではまた。