響かない場所で響かせる吹き方は余計なクセをつけやすい

どうもごんざです。
普段の練習は響かない場所でやっていて、本番当日のリハーサルからよく響くホールで演奏する。

よくある状況ですよね。このこと自体は環境は様々なので仕方ないことだと思います。

それを踏まえた上で、ぼくは響かない場所では響かない場所なりのやり方があるかなーと思っているのですが、部活動や一般の団体では、響かない環境での演奏でもホールの響きを要求されることが多いんですよね。

そのおかげで、演奏に不都合な吹き方や考え方まで習慣づけてしまって悩んでいる人がいます。

響かない場所でホールの響きの再現をしようと吹いていると

響かない環境でもホールで響いている音をイメージして演奏する、は素晴らしいと思います。

でも響かない場所でホールの響きを再現しようとして、

・口の中を開けてその場では太い音に聴こえる吹き方
・響かない場所でははっきりとしたアタックは時にキツく汚く聞こえるため、あえてアタックをやさしく吹く吹き方
・響きが助けてくれない分、音量でカバーしようとする吹き方

などを日頃から練習しているとホールではこんなことが起きます。

この吹き方はホールだと

  • 音が小さく聞こえる
  • または響かない場所でいつも音量を要求されているから、響く場所だと大きすぎる
  • こもって聞こえる
  • 遅れて聞こえる
  • 細かい音符が聞こえない
  • 出だしが不鮮明

こんな状況になります。

奏者側に起こる不具合

響かない場所で響く場所で聞こえる音を作ろうとし続けると、奏者側にもこんなクセがつきやすくなります。

  • 細かい音符が苦手になる(太い音を出そうとして吹く吹き方は小回りがききづらくなるため)
  • 高音域が出しにくくなる(同上)
  • タンギングが不明瞭になる(響かない場所で程よく聞こえるタンギングはホールの響きが加味されるとぼやけて聞こえるため)
  • 音が後押しになる(タンギングの強さと音量はほぼ比例するが、タンギングを弱いのに音量を出そうとすると後押しになりやすい)
  • 音色がぼやける(近くで聴いて操作して出している太い音は遠くまで届きにくいため)
  • 音色が重くなる
  • 吹いている感とでている音が比例しない

こうして書き出してみると、響かない場所で響いた音色(に聴こえるための吹き方)で演奏するのは、実は誰も得しないことが分かります。

響かない場所でどう練習に取り組むか

ホールに行ってから

「もっとはっきり吹いて」
「音の出だしが聞こえないよ」
「吹きすぎだよ」
「もこもこしてて何吹いているかわからないよ」

なんて言われたことありませんか?
ぼくは結構な回数あります。

当時は言われるがまま(そういうものなんだなあ)くらいにしか思っていませんでしたが今思えば、

(普段から実際演奏するホールの響き想定して練習しとけばいい話なのでは)って思います。

昔、吹奏楽コンクールが普門館で行われていたとき、普門館は響かない場所なのであえて音の終わりをわざと長めに吹いてそれらしい響きをつくる「普門館終止」なんて吹き方がありましたが、その逆ですね。

 

演奏者側も演奏者にアドバイスを送る側も、響かない場所での練習の際はホールの響きの再現を目指すのではなく、

  • 合わせるべきタイミング(入りや終わり)を合わせる
  • その場でははっきりしすぎていて時には汚く聞こえるような音の入りのタンギングでも、その後音が減衰していなければまずはよしとする
  • 聴こえる音のスピード感を合わせる
  • 響かない自分の音色を、音源として耳にしている楽器本来の音色と比べて落ち込むよりも、(ここは響かない場所だからこの音でOKと)受け入れる
  • 合奏であまり聞こえないパートがあったとして、例えばそのパートだけ抜き出して演奏した際にある程度音量が出ているのであれば、ホールでの響きを想定しそこまで音量を求めない又は吹かない(特にホールの反響版によって音量が大きく変わるホルンの場合)

こういった考えを共有することが大切。

このようにいくつかあるポイントの中でも特に誤解しやすいのは「音の出だしのタンギング」についてだと考えています。

音の出だしのタンギング?

0発進を除き、どんな音でも音の出だしは必ずタンギングしますが、響かない場所ではタンギングがはっきりしすぎていたり、汚く聴こえることがあります。

ですがここで、

「タンギング汚い」
「もっとやさしく」
「もっとやわらかく」

と感じたり、提案されてそのように吹いてしまうと音量が出にくくなりますし、音は不鮮明になります。音量が必要な場面では強いタンギングも必要ですがそれを避けやさしいタンギングをしてしまうと、タンギング後に息で押すいわゆる後押しの吹き方になります。

なので響かない場所での演奏では、

  • 音の出だしのタンギングがはっきりすぎる(または汚い)ように聞こえても、発音後に音が減衰していなければまずはOK。

とするのがおすすめです。

実際響かない場所で吹いていて聴こえてくる自分の音って気持ちいいものじゃないんですけど、だからといって(あー、自分下手だなあ)って思うことないんですよね。

おわりに

もしかしたらベルが後ろを向いているホルンだからこそ感じることかもしれない。ただ多くの管楽器、特に金管楽器には覚えがあったことも多いんじゃないかと思います。

自分でこれらを体感するには、響かない場所でも響く場所でもちょっと離れたところで自分の演奏を録音する習慣をつけてみることがおすすめです。自分の耳に聞こえている音と、離れたところで聞く自分の音って結構違うんですよね。

その聞こえ方の違いに慣れてくると、自分に聞こえている音と遠くで聞く自分の音がどう聞こえるかイメージしやすくなって吹き方も変わってくると思います。

とは言え響く場所で吹くって気持ちいいし、その逆は・・・ね。とってもわかります。ぼくも差を知り、切り替えるのにずいぶん時間がかかったし、響かない場所でも響く場所で聞こえる音を吹こうと無理しあれこれ変なクセをつけてしまい、抜け出すのに労力もかかりました。

響かない場所で吹いた自分の音も、響く場所で吹いた自分の音も、耳に聴こえる音は違えどベルから出ている音は同じなんですよね。

 

 

それではまた。