無意識に音の出だしで口が動くホルン吹きとのレッスン

どうもごんざです。
ホルンに限らずシビアな場面での音の出だしや、小さな音での音の出だしって難しいですよね。音が遅れて出てしまったり、そもそも音が出なかったり。ぼくは何度も経験があります。

そういうことが続くと音を出すたびに(大丈夫かな、音出るかな)とこわくなり、普段の練習でも不安が続くことがあります。

今回は、音を出そうとすると唇や舌に力が入り無意識に動いてしまい、音が出ても音色が悪かったり不安定だったり。意識して力を抜こうとしても思うようにいかず、音の出だしにつねに不安がある、という悩みをもったホルン吹きとのレッスンの様子です。

ぼくにとって苦しいレッスンではありましたが、あるメニューをお渡しし継続的に取り組んでもらったところ、状態が想像を超えるほど好転していきました。

初回レッスン・観察・仮説

最初にメールをいただいた時点での相談は、

ホルンさん
音の出だしがうまくいかないことに悩んでいます。音の出だしにつねに不安があるため、ソロなど目立つところで余計に緊張して失敗するという経験が多々あります

とのことでした。
この時点では、

ごんざ
(わかるなあ、そういう経験たくさんある…)

くらいに思っていました。
しかし、いざ実際にお会いして吹いてもらうと、

心の中ごんざ
(これは思っていたよりも難しいケースだ。)

こう感じることとなりました。

吹くたびに毎回、音をだそうとすると自分の意思とは関係なく唇と唇周りがもごもごと動くのです。その状態で音を出すので音の出だしは不安定になります。

状況は多少違えど、音を出そうとするたび口周りが自分の意思とは関係なく動いてしまう方とのレッスンは三度目になります。過去二回は力になれず歯がゆい思いをしました。

なぜ動きが起きているか
なにが起きているのか
どうしたらいいのか

問題は単純なものではないのは明らかです。

話を聞けば、

ホルンさん
だんだん調子が悪くなってきて、だましだまし吹いていたんですがもうかれこれ10年以上不調に悩んでいます

とのこと。
ある日突然音が出なくなる、ということももちろんありますが、不調が慢性化していくのは、些細なきっかけなことが多いです。

10年以上悩み続けながらもホルンを続けていて、思い悩んだ末にレッスンに申し込んでくださって。この話を聞いただけでも、この方がとてもホルンを愛していることがわかります。

なんとか力になりたい。
もう一度楽しんでホルンを吹けるようになってもらいたい。

でもどうしたらいいかわからない。

たくさんの葛藤の中レッスンが始まりました。



初回のレッスンではあれこれ提案する前に、これまでの取り組みを聞きながら、実際にご本人にも楽器を吹いてもらい、観察を続けました。

観察していると口周りが吹くたびに動く他に、必要よりもかなり大きな息の出口で、その上どの音域でも口の中がかなり縦長になっているように見受けられました。首もかなり太くなっていました。息の出口もとても広いように感じました。

中音域でこの吹き方では、例え口周りの動きがなくても吹きづらいはず。

奏法に関する知識の整理

奏法に関する知識の整理をすることからはじめました。

音を出す手順、
マウスピースの当て方、
プレス、
音域によってどんなところが変わっていくのか、変えていくのか。

その上で今の吹き方についてぼくの見立てを話し、その吹き方だとどんな不具合があるのか。ひとつひとつ話していきました。

心の中ごんざ
(今回のケース、何か少しのきっかけでガラッと状況が好転するようなことはまずないだろう、これは長期戦になる)

そう考え腹をくくりました。
とにかくなんでもやってみる。
これまでの経験を総動員する。わからない部分は調べ勉強し、必要に応じて詳しい人に頼る。そんな気持ちでした。

その後も観察と提案は続けましたが、初回のレッスンではなすすべもなく終えたことを覚えています。呆然としました。

ただ、先が見えないなりに、観察で見えたことをもとに仮説を立てました。

  • このケースのはじまりは、出したい音にたいして息の出口が大きすぎ、無理して吹いていたことから始まったのではないか。
  • そこに気付かず吹き続けたため様々なところに負荷がかかり、やがていろんな不都合が起きるようになったのではないか。
  • では息の出口を、各音を出しやすい大きさに変えることができるようになれば、改善に向かうのではないか。

と。
そう考えレッスン後に、口が動いてしまう中でも比較的吹きやすかった音からはじまるリップスラーを作成し、お送りました。

2度目のレッスン・焦燥・葛藤

それから半月ほどして2度目のレッスン。
初回での状態と変わりはありません。

吹こうとするたび口周りは動き、
息の出口は大きく、
口の中は縦長、
どの音を吹いても首のあたりがかなりふくらみ、吹きづらそうです。

はやいものでぼくの心は折れかかっていました。でもご本人はいたって冷静。その様子にとても助けられました。

心の中ごんざ
(この人はあきらめていない、どんなに不調であっても前向き、その上自分を頼ってくれている、ここでぼくが投げ出すわけにはいかない)

そう思いました。


観察を続けます。


お送りしたリップスラーのメニューは、アパチュアの大きさを柔軟に変えることができるきっかけになれば、との思いで作成したものでしたが、そもそも音の出だしに問題が起きている。これでは問題の改善にはつながりませんでした。

3度目のレッスン・疑惑・発案

不調は続きます。
ご本人はそもそも長い間不調に苦しんでらっしゃるので、短期的に劇的な効果を期待はされていないよう。

それでもぼくはあせりました。提案したことは素直に聞いていただき、なんでもチャレンジしてくださり、日頃から時間を見つけてはホルンを吹き、真面目に取り組んでいる。本当にホルンが好きな方。なんとかとっかかりだけでも見つけたい。

観察を続けます。

些細な疑問

初回から見えていたはずなのですが今回なぜか、マウスピースのセットの仕方が気になりました。マウスピースを口に当てる際、息の出口がぽっかり空いている状態のところにマウスピースを当てている。

唇の大きさ厚さ形は人それぞれ、骨格歯並びも十人十色、マウスピースのサイズもみんな違う。

となればマウスピースの当てる位置、当て方、角度だって人によって違って当たり前。でも今回セットの仕方がなぜかとても引っかかる。

そこで、マウスピースを吹くまでの手順の説明と確認、その場で思いついた音の出だしに関するメニューの提案をしました。

音を出している時間は少しで、負荷は少なく、その方にとって出しやすい音からはじまる、音の出だしに関するメニュー。その場で提案して意図を説明し、テンポも決めました。レッスン後に譜面を作成し、すぐお送り。これで様子を見ることにしました。

4度目のレッスン・変化・好転

それから一ヶ月後、4度目のレッスン。
劇的な変化が起きていました。

演奏時いつも口周りが動いてしまい、毎回音が不安定だったのですが、口が動くことなく音を出せている時間が圧倒的に増えていたんです。

ご本人にそのことを話すと、

ホルンさん
最近調子いいんですよ。前回のレッスンでやり始めたメニューのおかげです
とさらっと話してくれました。

ごんざ
お、それはよかったです!

なんて平静を装って一旦は対応してしまいましたが内面では、

心の中ごんざ
(なんでそんなに冷静?!どれだけ良くなっているかわかってます?!会わない間にどれだけがんばってくれたの!!!!!)

興奮しました。
あまりの好転に泣けるほど嬉しくなりました。

なのでここは一緒に喜ぶべきところだ!そう思い直し、

ごんざ
もっと喜びましょう!これはすごい進歩です!

と伝え、半ば無理矢理一緒に喜びました。

この時のお相手の笑顔は本当にまぶしかった。大人になると嬉しいことがあってもつらいことがあっても、あまりそれを表に出さないことが「大人!」って感じなんでしょうが、喜ぶべきときは喜ぶのが一番ですよね。


それ以降状態は好転し続け、レッスンのたびに格段に笑顔が増えてにこやかになりました。それが本当に何より、心から嬉しい。

会うたびに、

ホルンさん
最近こんな曲を吹いているんです!

と言ってお気に入りの曲を吹いて聴かせてくれるんです。なんの気負いもなく、吹きたい曲を吹いている演奏を聴かせてもらえる。レッスンの時間がちょっとしたコンサートのようで、特等席にいる気分になります。

おわりに

自分自身の状態の理解、
思考の整理、
奏法の組み立て方、
それに伴う練習メニューの構築、

これらを組み直すことで、実際に演奏が変わること変えていくことができることを実感すると、少しずつ自分でさまざまな取捨選択しながら楽器を吹けるようになっていきます。

そしてレッスンごとに会話の内容が濃く複雑に、一人一人枝分かれしてくるんですよね。継続的なレッスンの中で起きていくこの変化でぼく自身気づくことも多く、回を重ねるごとに有意義な時間になっています。

今回のケースは、とても苦しいレッスンでしたが、とんでもなくたくさんのものを得たレッスンでもありました。

そしてこの方とのレッスンで生み出されたメニューは、ぼくのオリジナルメニューの中でも大切なメニューになっており、自分自身の練習にも、他の方とのレッスンでも大活躍しています。






それではまた。

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