今日は中学生のホルン吹きとのやり取りを紹介します。

その子は「自分の音が汚い、音に雑音も入る」と悩んでいました。でも実際に出ている音は汚い音ではなかったんです。

では、なぜその生徒は自分の音を汚い音と思っているのか。

それは、音を聞くポイントと、自分の出したい音とギャップが問題でした。

自分の音のどこを聞いているか

このレッスンでは以前に書いた3種類の音のうちどこを聞いていますか?の内容をもとに生徒と話をしました。最初話を聞いたとき、生徒は楽器から出ている音だけを聞きすぎているんじゃないかと思ったからです。

楽器から出ている音だけを聞いていると、特にホルンの場合はベルから出たすぐの音が聴こえるので、ちょっとした雑音も気になるものです。なので「部屋で響いている音を聞いてみよう」と言って吹いてもらいました。

 

「どうだった?」と聞くと、「さっきより自分の音が汚く聞こえます」

 

うまくいきませんでした。

レッスンではうまくいかないこともよくあります。別の方法を探すことにしました。

ぼくが音を出して生徒に聞いてもらいます。

「音に雑音入ってる?」と聞くと「入っていません」とのこと。そこで「吹いている音の聞くところを変えると、ぼくだって自分の音は雑音ばかり聞こえるよ」と言ってもうまく生徒に伝わりませんでした。

 

そこで、「音に雑音は誰にでも入っているし、入っていていいものなんだよ」と話しました。

まだ不安げな顔をしています。

ここでぼくは作戦を変えました。

周りの人はその音を汚ない音だと思っていなかった

この悩みで不思議なのは、周りの同じパートのメンバーやぼくには汚い音には聞こえていない、ということでした。周りのメンバーも首をかしげています。

周りは汚い音だと思っていないのに、自分は汚い音だと思っている。不思議ですよね。

それになにより、聴いている分には彼女の音が太くてあたたかい音だったんですから。

でもこの太くてあたたかい音、にヒントがあったんです。話を聞いているうちに、少しずつ謎が解けていきました。

理想とする音と聴こえてくる音とのギャップ

話を聞いていくと「自分の音が暗くて嫌だ」と言います。そこで、「どんな音を出したいの?」と聞くと、「去年までいたホルンの先輩のような明るい音を吹きたいんです」と。

なるほど。
自分の太くてあたたかい音を、去年の先輩の明るい音と比べて暗い音と思ってしまっていたのか。

確かに言い方を変えればそうとも言えます。でも、どちらにもどちらのよさもあるのに否定的にとらえるのはもったいないですよね。

これは大きなヒントになりました。

 

比べてるとそうとも言えるかもしれないけど、あなたの音はあなたの音でいい音なんだよ。と伝えます。

今出している音が汚い音ではないんだよ、と伝えたくて周りのメンバーからも思ったことを言ってもらいます。

「全然汚くないよ」
「雑音も入ってないよ」

本人はまだ半信半疑「えー、そうなのかなあ」と言っています。

 

自分が「このクツ似合わないよなあ」と思いながらはいていても、周りからすると「そのクツすごい似合ってる!かわいい!」ってことがあります。

今回はこれに似ているんじゃないかと思ったんです。

 

今出ている音は、明るいか暗いかで言えば暗いかもしれない。でも君が汚いと思っている今の音は、低音の響きが多く混ざっているいい音なんだよ。きれいか汚いかという話ではそもそもないんだよ、なんて話をしながら考えます。

 

ここで一つ思いつきました。

試しに右手を少し開けて吹いてもらいました。ホルンは右手を開けて吹くと、ピッチも高くなりますが響きも明るくなるんです。

「どうだった?」と聞いてみると「さっきより気にならなくなりました」

きた!これでした。

高い響きが増したことによって音の聞こえ方も変わったみたいです。

ホルンの倍音の簡単な話

ホルンは倍音の多い音が出ます。他の楽器よりもたくさん高い音の成分と低い音の成分が混ざり合って音になっているのです。

低い音の成分が少ないと「薄い音」とか「平べったい音」なんて言われます。

この生徒の場合は、もともと低い音の成分が多い豊かな響きを持っていたんですが、その部分を聞きすぎてしまい「汚い」と思ってしまっていたんです。

 

「あれ、なんかお腹痛いな?」と思い始めるとどんどん痛くなるように、一度「汚い音」と思い始めるとどんどんその思いが増幅されてしまったんですね。

本人が気付いてからは「汚い」と思うことがだいぶ減ったようです。

最後は生徒に笑顔が戻ってレッスンを終えることができました。

 

レッスンの最後には、最初と比べてのびのびといい音が出ていました。

おわりに

悩みは人それぞれ違います。

レッスンではパッと悩みを聞いてパッと解決することばかりではありません。でも本人から話を聞き続けることで解決の糸口が見えてくるということが多いです。

太くてあたたかい音でも、聞き方によっては「汚い音」に聞こえちゃうんですね。でもそれくらい「音のどこを聞くか」ということが重要だということもわかりました。

後は他人と自分の音を比べることで否定的にもなってしまうということも。

 

他の人と比べると自分の音は足りないところはあるかもしれない。でも、その人の音にはその人の良さが必ずあります。

そこを大事にしていきたいですね。

 

 

それではまた。

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