毎日楽器を吹かなきゃいけない、という言葉の嘘

ぼくは中学で楽器を吹き始め、部活がないのはテスト休みと、ほんのちょっとの夏休みくらい、という生活を高校生も続け、その後音大に進学。

もちろん音大時代もほとんど毎日楽器を吹いていました。

吹かなきゃ下手になる、上手くなるために毎日吹くべき。そうじゃなきゃダメだ。

そんな思いで毎日吹いて吹いて吹いて吹き続けてその結果、どうなったか。

楽器を毎日吹かなければいけない、という義務感

たまに、体も疲れているし今日は休もうと思う日があって思い切って休んでも、どこかで罪悪感があって。まして、2日3日楽器を吹かないなんて考えられもしませんでした。

芸事の世界では「けいこを一日休めば自分にわかり、二日休めば師匠に知られ、三日休めば客にばれる」と言う。

こんな言葉もあるくらいだし、やらなきゃ!と楽器を吹くのが義務感になってて。

 

「吹かなきゃだめだ」
「休んじゃだめだ」
「今より下手になったらやばい」

 

いつのまにか吹きたくて吹く、楽しいから吹く、そんな所からかけ離れて楽器を毎日吹くことが、目的になっていたんです。

練習することで謎の安心感を得ていました。

 

楽器が好きで、
音楽が好きで、
もっとうまくなりたくて、
ただ楽器が吹きたくて。

 

本当なら一番に考えていたいこの気持ち達を押しのけて、

 

「〜しなければならない」

 

このネガティブワードが自分の中で堂々の優先順位第一位になってました。

そんな状況で練習しても意味ないだろ、って今ははっきりと言えますが、当時は取り憑かれたように「毎日吹かなきゃ」って思っていたんです。

なぜ毎日吹かなければならない、と思っていたのか

  • 周りの皆が毎日吹いていたから
  • 毎日練習するのが当たり前だから
  • なんかそういう雰囲気だから
  • 毎日練習しないとうまくならない、と思っていたから

理由はいろいろとあるでしょうが、ぼくの場合はこんな感じでした。

吹き続けることで楽器の調子を崩し、唇は腫れ、体は固くなり、いいことはなんにもなかった。取り組んでいた内容自体にも問題があったことが今になってみればわかるのですが、

 

「調子が悪いのは自分が下手だから」
「唇が腫れるのはスタミナが足りないから」

 

などとろくに分析もせず、全て自分に原因がある、と決めつけ責め続けていたんです。自分で自分を否定し続けていたな、と今になって思うけど、当時は気が付きませんでした。それがあまりにも当たり前だったからです。

当たり前が当たり前でなくなったきっかけ

そんな考え方が当たり前なまま、ついには楽器をやめてしまいました。(関連:音楽業界での挫折、その後再び音楽に携わるまで

楽器を辞めて働き始めると、もう楽器を毎日吹くことはなく、最初のうちはほっとしていました。

「ああ、もう毎日楽器吹かなくてもいいんだ」って。

仕事していたときには、たまに休みの日に、思い出したように楽器を吹くくらい。

でもそのときに感じたんです。

 

「あれ、そこまで吹けなくなってない」って。

 

一度自転車に乗れればその後乗り方を忘れないように。一度泳ぎを覚えてしまえばその後忘れないように。

楽器の吹き方も覚えていたんです。

むしろ、毎日吹かなきゃいけないと思って吹いていたときと比べて吹きやすくなっていて、音がスムーズにでた。

そのときはなぜだか理由はわからなかったけど今になって思えば、吹きやすくなった理由ははっきりしていた。

それは、

「楽器が吹きたい」

と思って楽器を吹いていたから。

 

  今までは、

「毎日楽器を吹かなければいけない」

だから、吹く。

 

このときは、

楽器を吹きたいと思った」

だから、吹く。

 

同じなようでこれは全然違うんです。やりたいこと、望みがあってはじめて人は体を動かし、行動しはじめます。

この場合は「楽器を吹きたい」と思い、その思いに向かって体が動き始めたからスムーズに音がでた。

 

この体験がきっかけで、毎日楽器を吹かなければならない、という呪縛から解放されました。

自分で毎日楽器を吹かなければいけない、と思い込んでいただけということにも気が付きました。

 

楽器を再開してからは、吹きたいと思ったときに楽器を吹くようにしています。吹きたいという気持ちを持って吹くようにもしています。

今日はちょっと吹きたくないな、と思ったときはなぜ吹きたくないか、考える。考てみると大抵ちょっとしたこと。
そして、吹きたくなるにはどうしたらいいかなーって考えます。

 

ここらへんから、吹きたい気持ちが湧いてきて「よし、吹こう!」となってくることが多いんです。

それでも吹きたくなければ、吹くことを休んだっていい。

どうするかはあなた自身で選ぶことができる

選べるアイス

「〜しなきゃいけない」、なんてことは本当は何もないんです。

それは自分で決めているだけで、楽器を吹かないことを選ぶことだってできる。

 

選択肢は隠れていただけで、楽器を吹くことを自分で選んでいたんです。

 

今は一日吹かない日があっても、以前のような罪悪感はありません。一日休んでも、吹けなくなるわけではないことを知っているから。

 

以前、外国の人は二週間ぐらい全く楽器を吹かないで、いきなり交響曲を吹いたりもするよ。と聞いたことがあります。

そのときは「世の中にはすごい人がいるもんだ」と思ったくらいでしたが、今は少し理解できるようになったかな。

 

高校時代、大阪府立淀川工科高等学校の丸谷明夫先生に指揮をしていただく機会があって、合奏で話してくださって印象に残っている言葉を紹介します。

「じっと考える時間が大切や」

「楽器は吹いていないときにうまくなるんや」

時間が経つほどその通りだなあって思い出します。先生元気かな。

おわりに

いつも毎日「よし、楽器を吹くぞ!」とわくわくして楽器を吹いているのなら、それが一番いいと思います。すばらしいことです。

それなら毎日楽器を好きなだけ吹いちゃえばいいのです。でもそんな日ばっかりじゃないですよね。

部活が忙しくて休むとか無理だし!

わかります。
ぼくもそうでした。

そんなときは、考え方を変えてみましょう。

 

〜しなければならない、と自分を縛り付けると、体は固くなるしいいことが少ないです。

 

「〜しなきゃ」と思っている自分に気付いたら「〜しよう」とポジティブな言葉に置き換えてみましょう。

これだけで違うんです。

ちょっと休みたくなったら休んでも大丈夫。楽器を吹いていないときにできることもたくさんあるよ。

 

曲のイメージづくり、譜読み、フィンガリング、ステキな音楽を聞く、空を眺めてみる、などなど。いくらでも!

何をしてもすべてが自分の音楽に繋がります。

少し休んでまた吹きたいな、って気持ちが湧いてきたら吹こう!長い時間無理に練習するよりずっと効果的です。

 

 

それではまた!

 

 

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    ABOUTこの記事をかいた人

    ごんざ ゆういち

    国立音楽大学卒業。ホルン奏者。管楽器コーチ。 自身が長い間、心身ともに不健康な状態で音楽と関わってきた経験から「健康的に音楽しよう」をコンセプトに多方面で活動中。