12月7日(土)8日(日)盛岡出張レッスンのお知らせ

速いフレーズに出会ったとき、ゆっくりから練習する前に考えたいこと

どうもごんざです。
パッと見ただけでは吹けなさそうな速いフレーズが譜面上にあったとき、どうやって取り組んでいますか?

【ゆっくりから少しずつテンポを上げて練習する】

という方法が定番ですよね。
でもこの方法、いくつか手順を踏んでから出ないとゆっくりから練習しても全然できるようにならないルートに迷い込んでしまいがちです。

ぼくは以前何度か、ゆっくりから練習してテンポを上げているのにちっともできるようにならない、という悪夢のような経験をしました。

今になってわかってきているのですが、定番の方法で上達していくルートを行くにはいくつかの準備が必要なんです。

音域的に問題はないか

まずはこれです。
その速いフレーズ、音域はどうでしょうか。一般的に高いか低いかではなく、今の自分にとってどうか考えてみてください。自分にとって出すのも難しい音域が含まれているのかそれともそうではないのか。

ホルンで言えば、モーツァルトのホルン協奏曲で出てくる速いフレーズの中に、高音域を含んだものがいくつかあります。

協奏曲第4番の前半
協奏曲第2番の前半

上の二つの楽譜はinEsの楽譜なので、記譜より一音下げて読む必要があるのですが、ぼくが学生時代取り組んだ時には、当時の自分にとってどちらの譜面も音域的に吹くのが困難でした。そもそもHiEsがでない、でたとしても苦しそうで曲には使えない音色。

この状態ではゆっくりから練習しても、そもそも指づかい以前の問題があるので、テンポを速くしていったところでできるようにはなりませんでした。でもそれがわかっておらず(やっていればできるようになるはず)と繰り返し続けていました。

これでは素足で登山を続けるようなものです。足の皮は分厚くなって登りやすくなる可能性はありますが、靴を履いた方が圧倒的に登山しやすくなります。

難しい、を分解する

この場合まず考えたいのは、

  • そもそもハイトーンが出る仕組みを理解してるか、
  • 自分に何が足りないかわかっているか、
  • 理解できているならハイトーンの音域を広げるような練習メニューを組んで日々それに取り組んでいるか、

だったなあと今になって思います。当時はとにかく闇雲に繰り返しそのフレーズを吹いていました。それではできるようになるはずがない。

高音域でも低音域でも、速いフレーズにその時の自分にとって音域的に難しさを感じる音が含まれている場合、ゆっくりから速くしていく練習を積み重ねても、速く吹けるようになる可能性は低いです。

様々な指づかいを試し、最適化しているか

速いフレーズに取り組む前に、どんな指づかいが自分にとって動かしやすく、なおかつ音楽的に自然で、音色やピッチ的に問題も少なく、一番やりやすいかを探すことはとても大切です。

例えば下のフレーズ、赤枠内にうっすらと [1.0.3.1.0.1.0.1] と書いています。

inEs

ホルンの運指表や、一般的に使われている指づかいで吹くとするなら、この譜面はEsdurでシとミにフラットがついているので、

♭シ ド レ ♭ミ ファ ソ ラ ♭シで
[1. 0. 12. 1. 0. 0. 12 .1]になるかと思います。

しかし楽譜に書いている指番号は、
[ 1. 0. 3. 1. 0. 1. 0. 1 ]

かなり基本とされる指づかいとは違いますよね。最初この指づかいを知ったとき(Gを3でとって上のDを0?そんな指づかいで大丈夫なのかな)と思ったのですが、吹いてみるとこれがとっても吹きやすいんです。

自分の、
<<指づかいはこうあるべき>>
という考えがいかに可能性を狭めていたかに気づいた瞬間でもありました。

もう少し身近な譜面の例を出すと、アルフレッド・リード作曲の「アルメニアンダンス パートⅠ」のホルンの譜面、最後のページにかなり速いテンポの16分音符で、AからHiDまで駆け上がる難所があります。

学生時代、アルメニアンダンスを演奏する機会があり、当時はたっぷり練習時間があったので、テンポをすごくゆっくりにして練習時間で難所をごり押ししようとしていたのですが、ちっともできるようになりませんでした。

手元に楽譜がないのですがこんな楽譜だったと記憶しています。

この部分全部B♭管で吹くなら
[ 2. 12. 23. 12. 23. 12. 2. 12. 2. 23. 12. 2. 12. 23. 12 ]

の運指で吹くことが多いと思います。(上の運指は全部B♭管なので、4の運指は省いています)

まじめに(いつもは真ん中のCまでF管で吹いているから)と取り組むと押しB♭の楽器の場合

[ 0. 2. 0. 2. 234. 124. 24. 124. 24. 234. 124. 24. 124. 234. 124 ]

となりますよね。

フルダブルホルンを吹いていて、いつもはF管を使う音域とB♭管を使う音域を分けていたとしても、速いフレーズを吹く際は管を統一した方が吹きやすいことが圧倒的に多いのでおすすめです。それにアルメニアンダンスのフレーズの場合、全部B♭管で吹けば少なくとも中指は押しっぱなしですむのですから。

学生時代、当時ぼくがさらった時は、全部B♭管の指づかいで練習していたのですが、ちっともできるようになりませんでした。練習が足りなかったのかもしれませんが、もう少し運指を考えればうまくいったかもしれない、と今なら思います。

ホルンの場合、左手の薬指が含まれた指づかいはやりにくいので、、なるべく左手の薬指を押さなくてすむ指づかいを探すとうまくいきやすくなります。

今ぼくがフルダブルホルンでアルメニアンダンスの連符を吹くとしたら、

[ 2. 12. 23. 12. 23. 12. 2. 12. 2. 23. 12. 2. 12. 23. 12 ]ではなく、

[ 2. 12. 2. 12. 2. 12. 2. 12. 2. 23. 12. 2. 12. 2. 12 ]

と吹きます(どちらもB♭管のみで)。②の指づかいなら左手薬指は一回しか使わないからです。

正しい指づかいでなくていいのか

そもそも正しい指づかいってなんですか?という話になるのですが、気持ちはわかります。

ずっと使ってきていた指づかいではないものを使おうとするとき、なんだかいけないことをしているような、正攻法から逃げているような、そんな気持ちになったことがぼくもあります。

レッスンで言われた「合うものをもっと探したらいいよ」

学生時代、海外のホルニストのレッスンを受けたとき「どうしてそんなに一つの指づかいにこだわるんだい?いろんな指づかいを試して吹きやすくてその場に合うもの、自分に合うものをもっと探したらいいよ」と言われたとき、初めて(えっ、それでいいんだ!)と視界がパッとひらけた記憶があります。

あなたが『一般的に知られている指づかいで正しく吹けるかコンクール』に出場するための練習をしているならいいのですが、きっとそれに出場するわけではないですよね。

なんとなく楽譜に書いてある音は、基本的にいつもの指づかいで吹くもの、と思っている人は、もっと吹きやすい指づかいがあるかもしれない、と考えてみましょう。

速いフレーズをゆっくりから徐々にテンポをはやく練習していく場合、取り組む前にそのフレーズをどの指づかいで吹くか、を考えることはその後の練習に大きな影響を与えます。

苦手な部分を把握しているか

このフレーズでの場合、到達地点が比較的高音域であること以外に、素直に駆け上がっていかない部分にも難しさがあるように思います。

これが例えば、

であればそこまで難しくないんです、実は。そこがジグザグしているから少しやりにくくなるんです。なので前半に難しさを感じる場合、最初は分割して練習するのもおすすめです。

ひとまずここまでを練習してみるのもいいと思います。
最初から全部いっぺんにやろうとするとあまりのできなさに挫折するかもしれませんしね。

おわりに

魔法のように「こうやってやればどんなフレーズも一撃!」という方法を紹介できなくてすみません。今のぼくはまだその魔法を覚えていません。

冗談はさておき、吹奏楽の楽譜を多く吹いていると、ホルンは比較的長い音符が多いですから、いきなり黒い譜面が出てくるとそれだけで拒否反応が出て頭真っ白になりがちです。

そんな時はいったん落ち着いて楽譜を見て、

  • 音域的に今の自分にとって無理がないか、
  • 指づかいを確認し最適化し、
  • 分割して考える

この手順を踏めば難しさが和らぐことが多いです。少なくともどこの部分に苦手さを感じてるかはわかるはずです。

あとは普段の練習メニューにそれらを含めて今の自分に必要なもの、を取り入れられると最高ですね。

いろいろと試していくと様々なところに可能性があることがわかるので、楽しく感じることも多いですよ。

今回はホルンの譜面を例に挙げて書きましたが、楽器問わず考え方は共通する部分も多いんじゃないかな、と思います。







それではまた。