レッスンをする、ということ

この記事を目にしているあなたは、きっとこれまで何人ものレッスンを受けてきたでしょう。

どんなレッスンでしたか?

厳しかったり、緊張したり。
励まされたり、勇気付けられたり。
目からウロコのアドバイスをもらえたり、わかっていてもできないことがあったり。

何度も同じことを言われてしまったり、人によって言ってることが全然違ったり。
勇気をもらったり、元気をもらったり、生きる気力をもらったり。

様々なレッスンがあります。
ぼくもたくさんのレッスンを受けてきましたし、レッスンする立場も多く経験しています。

人に何かを教えるって、とても大変ですよね。
それもそのはず。
レッスンを受けることはあっても、ほとんどの人はレッスンのやり方を教えてもらうことはないからです。

教える側になって初めて気付くことも多いはずです。

ぼく自身、レッスンすることが最近は多いですが、未だに悩むことも多いです。

上から抑えつけるわけでもなく、従わせるのでもなく、できるまでひたすら繰り返すのでもなく、意味なくほめて甘やかすのではなく、おだてるでもなく。

極端なやり方をせずにも、相手が前向きな気持ちでどんどん上達していく。そんなレッスンができれば一番ですよね。

この記事は自分の体験や考えていることをギュッと詰め込みました。

ぼくの思うレッスンは、レッスンを受けに来た人が今どこにいるのか(習熟度、経験、知識等)をお互いが知り、これからどこに行きたいのか(やりたいこと、目標等)を考える時間。

 

長文ですので、目次を見て気になる項目だけ読んでもいいかもしれません。

演奏を聴かせる=レッスン、ではない

楽器のレッスンだと先生が吹いてくれて生徒に聞かせて「さあ、こう吹いてみて」が多いですよね。

これは必要なことです。

素晴らしい演奏を目の前で聴いて、(こんな音が出せるようになりたいな)(音楽って素晴らしいな)、そんな風に思いがんばるきっかけになったり、憧れたり、目標を持つきかけになるからです。それだけでなく、言葉だけでは伝わらないものも演奏を聴くとたくさん伝わってきます。

ただ、ここで教える側として知っていたいのは、演奏を聴かせて一緒に吹くだけでスイスイうまくなる生徒はそういないし、スイスイうまくなる生徒は、生徒自身の観察力や想像力、模倣力がもともと優れているだけ、ということです。

この場合、生徒の力に頼っていることを教える側はわかっていたいです。もちろん生徒の協力は必須ですが、そこに甘えるだけではいけないと思うのです。

 

陸上競技のコーチは、自分が走ってみせて「さあ、同じように走ってみて」と言うでしょうか?

野球の打撃コーチは自分のスイングを見せて「同じようにバットを振るんだ」って言うでしょうか?

言ったとしても、それだけではないはずです。もっと個人個人の体格や習熟度、筋肉のつき具合、その人自身のクセなどを見抜き、今後の計画を立て説明をし、トレーニングするはずです。

 

吹いて聴かせて「さあやってごらん」だけだと、うまく模倣できる人やそれだけでコツをつかめる人はいいのですが、みんながそうではありません。観察力や想像力、模倣力が備わっていなくても、それが=その生徒は劣っているということにはなりません。だから、吹いて聴かせて生徒の演奏が変わらなくても生徒が悪いのではありません。

これを教える側がわかっていないと、吹いた通り生徒ができないのに、先生が何回も吹いて「こう吹くんだよ」と言い続ける。生徒は(わかってるんだけどどうやればいいかがわからない、自分に何が足りないんだろう)と自信を失っていく。こんな悪循環になりかねません。

一緒に演奏することで分かることは多い

生徒と先生が一緒に演奏すると相手と自分の何が違うかが体感としてわかります。フレーズ感が違ったり、息の流れが違ったり、音量が違ったり。先生側でも気づくことも多いです。ぜひ試してみてください。

レッスンで必要だと感じていること

楽器を教える側がレッスンですべきことは、いろんな分野のコーチや先生と基本的な考え方は同じです。

個人個人のクセを見抜き、悩みを汲み取り、どう取り組んだら先に進めるのか、そもそもどこまで理解しているのか。どうなりたいのか。何を考えて取り組んでいるのか。楽器を吹くにはどういう仕組みで成り立っているのか。

 

生徒のスタートがどの段階であっても、先生がそこまで降りていき手取り足取り、最初は説明できる先生であってほしいとぼくは思います。

矛盾するようですが、その一方で先生みんながみんなオールマイティに教えることができるわけではないことも知っています。なのでその場合は、自分が何を教えることができるか先生なのか、何を教えるのが得意な先生なのか、そこをわかっていてほしい。

先生にも実は得意不得意がある

なんでもオールマイティに教えることができる先生が一番だよね!とは思っていますが、実際それができる先生は少ないはずです。

なのに日本に根付いている、先生=なんでもできる人、という図式が先生側も生徒側も不幸にしてしまっています。

 

ざっくり言えば、音楽家は各楽器の専門家ではあっても誰でも指揮を振れるわけではないし、パッとスコア渡されてすぐ何でもアドバイスできるわけでもないし、どんな曲でも知っているわけではないのです。

先生は魔法使いではないのです。

 

奏法上に悩みを抱えている生徒が、奏法に悩んだことがなく「音楽」を教えるのが得意な先生のもとへレッスンに行っても、先生は教えたいことを教えられないし、生徒は教わりたいことを教われないので、お互い不幸です。

反対に、奏法上の悩みを解決するのが得意な先生のところに音楽を教わりたい生徒がレッスンに行っても、お互いあんまりいい時間にはならないとも思います。

先生は自分の得意分野を知ろう

先生として、自分がレッスンする上で何ができるのか、はわかっておいてほしいところです。

ぼくで言えば、合奏レッスン、グループレッスン等の複数人数を相手にするレッスンはお引き受けしていません。個人レッスンに特化しています。

以前、できることを丁寧に深く。権左勇一は個人レッスンに特化しますという記事でも書きましたが、いろいろな経験をした上で、ぼくの場合は自分の力を発揮するには個人レッスンが一番だ、と知ったからです。

それに加えて、音楽的なことよりも奏法上の悩みを解決することが得意です。メンタル的な問題にもお役に立てる可能性が高いです。

得意分野がはっきりしている分、ソロコンクールを受けるためのレッスンや、オーケストラスタディのレッスン、大きい編成等のレッスンはお引き受けしていませんし、そもそも依頼もほぼ来ません。というかぼくより適任はたくさんいます。

 

世の中にはいろんな先生がいて、合奏で音楽をつくりあげるのが得意な先生もいれば、素晴らしい音楽性を持った先生もいます。オーディションのコツを心得ている先生もいるでしょう。

ですので、もしぼくの元へ自分では対応できない依頼が来たとしたら、事情をきちんとお話しした上で、他の先生を紹介しています。

 

先生が心得ていたいことは、自分のできることを知り(やりたいことでもあるかもしれません)、それをできることなら目に見える形で発信していくこと。

そうすることで、自分が役に立てる人がレッスンに来てくれるようになり、生徒も先生に何を習いにいくかが明確になるので、お互いのやりたいことが不一致で、不幸な時間になることが減るのではないかと思うのです。

それ以外にも相性だとか場所だとか料金だとかいろんな条件もあるので一概には言えませんが、今後先生側でも「何でも屋」ではなく「私はこれが得意」というものを、表に出さずとも知っているだけでレッスンも変わってくるはずです。

自分の経験を伝える、ということ

レッスンをはじめたばかりの頃は、先生は自分が演奏者として経験してきたことを伝えることしかできないでしょう。

それでいいと思います。

ただ、慎重になる必要があります。
自分の経験が相手にいつも当てはまるとは限らないからです。もちろん当てはまる生徒もいるでしょうが、どちらかと言えば自分が経験したこともないようなことで悩む生徒に出会うことが多いはずです。

自分の経験が当てはまってスイスイ進む生徒が物分かりのいい生徒で、当てはまらなければお手上げ!だとちょっと短絡的すぎますし、自分の経験則のみで生徒にレッスンし続けるのも、やりすぎればやや暴力的です。

 

洋服で考えてみましょう。

自分がLサイズの服を普段着ていて、背格好も体格も違う人に同じ服が似合うでしょうか?たとえサイズが合っていたとしても、似合わない可能性だってありますよね。

「こういう服があるんだよ、着てみる?」という提案は、そういう服を知らない人もいますので必要ですが、無理矢理着せるのはナンセンスです。

 

服で考えるとわかりやすいのですが、人に何かを教える場面ではこれに似たことがよく起きてしまっています。難しく考える必要はありませんが、これを知っているのと知らないのとでは、先生の元へ来る生徒の気持ちが変わります。

自分にはサイズも合わないし、そもそもセンスも自分には合わない服ばかりを毎回すすめてくる服屋さんに、すすんで行きたいとは思わないですよね。

先生だからといって完璧じゃない。トライ&エラーが基本でいい

先ほどの例え話を続けますが、最初からバシッと「あなたにはこれが似合う!ほら!着てみて!」とレッスンできる先生は、この世に一人もいませんので安心してください。もし、そう言い切る先生がいたらちょっと自意識過剰であやしい先生です。

先生も迷うものですし、着てもらうまでその人に本当にその服が似合うかどうかわからなくてもいいんです。それに実際のレッスンは服よりもよっぽど複雑です。

一人一人、骨格から筋肉の使い方、生活環境、考え方、これまでの環境、これまで培ってきた知識、これからやりたいこと、などすべてが違いますから、そこにフィットするレッスンをすることは容易ではありません。

だから試してうまくいかないなら「よし、今のはやめよう。次はこれ試してみよう!」でいいんです。ここで(一発で完璧にフィットさせなきゃ…)と思うと苦しくなりますし、いろんな感情も吹き出てきてしまいます。

ほとんどの場合マイナスの感情は必要ない

先生も人間ですしレッスンだけで生きているわけではありませんから、日々いろんな出来事がありその都度いろんな感情を抱えてレッスンしてしまうこともあるでしょう。

イライラしてしまったり、凹んでいる状態でレッスンすることもあるでしょう。

わかります。

 

でも、そこで生徒の立場に立って考えてみましょう。

(今日先生機嫌悪いな、怒られないようにしよう)とか、
(先生元気ないな大丈夫かな)なんて生徒が思ってしまうような時間には、できることならしたくないですよね。

ぼくも声を荒げてレッスンしていたこともあります。今なぜそうなってしまっていたか思い返すと、イライラしていたり、自分のアドバイスが効果的でなかったり、そもそもそういうやり方しか知らず、引き出しも少なく、うまくいかなかったりすることが原因でした。

これ、生徒にはまったく関係ないんですよね。

それに、そういった負の感情が渦巻く場所でのレッスンでは、生徒が安心して自分をさらけ出し、向上していく場にはなりにくいです。

そりゃそうですよね。

ミスして怒られたり、先生の言われた通りにできないと先生が不機嫌になっていたら、生徒は先生の顔色を伺うようになっていきます。

そんなレッスン、誰もしたくはないはずです。

できたことはできたと伝える大切さ

ぼくはレッスンでよく、

「今いい音でしたね!」とか、
「今変わりましたね!」と相手に伝えます。

そうすると生徒になんだか変な顔をされたり、戸惑われたりすることが多いです。「そんな風にほめられたことないです…」と言われることもあります。なんだかほめられること=喜んじゃだめ、みたいな雰囲気さえ感じます。

テストでいつも80点の人が85点をとったら嬉しいし喜ぶだろうし、体重を気にしている人が今より1kgでも痩せたら大喜びするのに、レッスンでは少し変化があったとしても、完璧な演奏でないと喜んじゃいけない、と思っている人がすごく多いんです。

完璧からするとまだまだかもしれない。でも以前より少しでも前に進んでいたら、それは前進です。

ある日いきなり完璧にはなりません。一歩一歩進むから目的地に着くんです。たまに近道やちょっとくらいワープすることもあるかもしれないけど、基本的には一歩一歩です。

だからその一歩を大切にしたいといつも思っています。一歩進んだら「今一歩進みましたね!おめでとうございます!」ってぼくは一緒に喜べる関係でありたいです。

指摘とアドバイスとその後どうだったかをセットにする

「ここがダメだね」
「ここがいつも◯◯だね」

こういう風な指摘をされたことは誰でもありますよね。自分がすることもあるでしょう。先生としては(どうしたらよくなるかは自分で考えろよ)と思って言ったのかもしれません。ここはその先生と生徒のレッスンの進み具合や関係性にもよる部分。

実際、それだけで変化が起きれば問題ないと思います。変化が起きることもあるでしょう。

でも変化が起きなかったとき。

 

「なんでできないんだ!」
「自分で考えろ!」

 

と先生が思う気持ちもわかりますが、こういう言葉を生徒に吐く前に一瞬でもいいので、(今なぜうまくいっていないんだろう)と先生は考えてほしいです。

どういった言い回しで、口調で、タイミングでスピードで、表情で言うかはケースバイケースですが、ムッとする気持ちをグッとこらえて。

なんでもいいので、一言アドバイスしてみましょう。そして経過を見守ってみてください。そしてアドバイスしたことによって起きた変化を相手に伝えましょう。

 

合奏で。
「ホルンそこ聞こえないからもっと大きな吹いてみよう、じゃあもう一回」

演奏後、
「はい、じゃあ次はここから〜」

なんて合奏が進行することはよくありますが、多くの場合指摘された側はどう変化が起きていて、以前よりよくなったのか、もっと大きな音が必要なのか、わかっていないことが多いです。(※お互いが高いレベルでの信頼関係がすでにあり、言わなくてもわかるであろう場合あ、生徒が感じていることが見て取れる場合はもちろんこの限りではありません)

でも指摘した側は変化をわかっていますよね。それを伝えましょう。

生徒側がどう思ってるかわかっているはずだ、は先生側の甘えです。これは(言わなくてもわかってるはず)が続いた結果、すれ違いが増えていった家族やカップルを想像してみれば、当たり前のことで、口に出すことがどれだけ大切かわかるはずです。

「今のよかったよ」
「まだ足りないかな!」

アドバイスした後どう変化したかが相手に伝われば、相手の気持ちにも変化があります。ほんの少しのことですが、必要なことです。

アドバイスした後、かえって音を外してしまったり、音程が悪くなってしまったり、リズムが崩れてしまったりしても、そこで口を出すのは少し、我慢しましょう。それは生徒がチャレンジしている証拠です。いつもと違うことをしようとしているってことです。

やる気がないのはなぜか、も考える

「お前らやる気出せよ!」
「今のままじゃダメだ!」
「やる気ないならでてけ!」

ぼく自身何度も言われてきました。思い出すだけで胸が締め付けられます。「頑張るの意味を辞書で調べてこい!」と合奏が中断したこともありました。

 

それで生徒のやる気が出ると思いますか?

 

恐怖や義務感、追い詰めることで生徒の本当の能力が発揮されると思っているなら、それは漫画の読みすぎです。

いつもできているのに今日は明らかに手を抜いている。ここが踏ん張りどきだもう少しがんばろうよ。そんな気持ちで言うならいいかもしれません。

でもやる気のない生徒がいたら、それは何かのシグナルですよね。

そこを考えてみると何かヒントがあるかもしれません。たまには生徒の話を聞くのもいいと思います。

生徒を呪わない

「これができなきゃ◯◯になるぞ」
「このままじゃ◯◯だ」

そんな風に生徒に呪いをかけていませんか?

脅し、とも言えますよね。
そうやって呪われた生徒は恐怖からがんばるかもしれません。

 

でも、他に方法はないでしょうか?

 

先生が生徒を呪ってしまうのは、先生の力の無さが露呈した結果ではないでしょうか。ギリギリまで一緒に悩みたいものです。そこでたとえ結果が出なかったとしても。

たとえそこまでの意図はなかったしても、先生の言葉というのは生徒の心に深く残るものです。その後何年経っても事実とは違う指摘を受けたり、ダメ出しされ続けたことが頭のどこかに残っていて、演奏に影響を及ぼしているケースはたくさんあります。

言葉を味方につけ、駆使しよう

一つのことをアドバイスするにも、たくさんの切り口があります。

例えば生徒が演奏しているのを聴いて(もっと大きな音で吹くといい演奏になるな)と先生が思ったとします。

技術的な観点からのアドバイスだと、パッと考えただけでも

「息をたくさん吸ってみよう」
「息をたくさん吐いてみよう」
「タンギング強くしてみよう」

などが考えられますし、
抽象的なアドバイスだと、

「もっと響かせてみよう」
「力強く演奏しよう」
「勢いよく吹こう」
「エネルギッシュに演奏してみよう」

なんてアドバイスも考えられます。
これらに正解はありません。言うタイミング、相手の受け取りやすさ、場面などによっても違うでしょう。

変化が起きればいいのです。

ただ、変化が起きればいいといいと言っても、学ぶ側が前向きに演奏できてぴったりくるアドバイスを選ぶべきだとは感じています。

レッスンする側も一つの切り口であまり相手に伝わらなければ別の切り口もどんどん試してみましょう。

生徒に似合う服を一緒に選び、自分で選べるようになってもらおう

レッスンをするということは、自分の着ていた服をどの生徒にも着せることではないし、自分の着せたい服を無理に着せることでもありません。

レッスンをするということは、生徒が自分に似合う服を選ぶことができるよう、視野を広げる手伝いをし、どんな服にもチャレンジできるよう、勇気をつけてあげることです。

 

最近何かと話題のZOZOSUITがぼくの思うレッスンにとても近いです。詳しい説明は省きますが、これまではいくつかのサイズで売っていた服を、これからは一人一人に合わせる服になりますよ、という革新的なサービスです。

 

 

レッスンをする側の最終目標は、生徒自身がレッスンに来なくても、数ある選択肢の中からその時々で最適なものを選びながら自分自身で上達し、歩き続けられるようになってもらう。これに尽きます。

自分に自信がなかったり、歩き続けるやり方がわからない生徒に、その人自身にいくつもの選択肢があって、自分の持っている良さを伸ばしていくには何が必要なのか、それを伝えていくのがレッスンです。

 

 

そのために先生側は、自分が人生をかけて培ってきた知識や経験をどう相手に伝えていくか。

それがレッスンでもっとも大切なことだと思うのです。

 

 

 

それでは、また。

シェアしてくれると喜びます!

      \Twitterでフォロー!/
      

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です