今日はフリーランスのチューバ吹きの方とレッスンをした話。
音楽家としてある程度成熟してくると、技術的にも音楽的にも普段から突き詰めている分、本人の心が開けば変わるのもはやいことが今回わかりました。
ポイントは4つ。
一、リラックスって言葉に惑わされるな
一、固定されているイメージを掘り起こし、今の自分に合うものに置き換える
一、低音の吹き方
一、自分の変化を受け取ること
目次
リラックスして!はざっくり表現
中高生の吹奏楽部の現場でもよく聞く言葉「もっとリラックスして!」
きっと音を聞いてどこかに力が入っていると感じるから言うんですよね。そこまではいいと思うんです。でもアドバイスが、「もっとリラックスして!」だけだとよほど自分の中に引き出しがある人相手に話しているのではない限り、言葉が足りないと思うんです。
雰囲気アドバイスだと、言われた方は(リラックスってどこをリラックスすんだよ)ってよくわかんないまま必要なところの力まで抜いてしまうケースもあります。
これはレッスンをしていて目の当たりにしたことです。具体的に「ここには力が必要でここの力はなくてもいいかな」って話しながらレッスンを進めていくとその辺りがクリアになっていきました。
リラックスして!が本来必要な唇とマウスピースと歯の密着度の関係に影響を及ぼしていた
相手のチュービストは、音が上の音域にいくにつれてマウスピースが唇から離れたがっているように見えました。
上の音域にいくにつれて息圧が高まる分、密着度も増さないと楽にいい音は出ませんが、鉄の塊を口に押し付けるのを嫌がる人は多く、逆に楽器が唇から離していってしまうことが多いです。
そこで音域による息圧の変化によって意識的に密着度を増やしていくと、上の音が楽に安定して当たりやすくなったり、下の音がバリッと鳴るようになります。
この提案をしたところ、音色に変化がりましたし、本人も変化を感じてくれました。
これはホルンだけでなく、金管楽器すべてに言えることです。
動かない美学の謎。体動いていい音出るならどんどん動こう
ヒザの上に楽器を置いて吹くチューバだからチューバ特有の問題なのですが、音域によってはマウスピースの角度が変わったり、密着度が変わったりするのを、楽器をひざの上で動かさず、全部自分の体で調整していて窮屈そうでした。
「楽器にも手伝ってもらって楽器も動かしてみたらどうかな」と提案して楽器も少しだけ角度を変えながら吹いてもらうと、少し楽に吹けるようになったみたい。いい感じです。
本人は意識してなかったみたいですが、音域が変化するとマウスピースの当てる位置も少し変えていたので「行きたい方に楽器動かしてみてましょう」と提案したら、音を当てる精度がさらに高まりました。
ゆっくりのフレーズを吹くとき音が揺れてしまうと相談してくれていたのですが、音域によって当てるポイントを変えて演奏してみると不思議と揺れなくなったんです。
低音
ヒアリングした時に彼の悩みのひとつに「低音域から中音域の連結がうまくいかない」と聞いていました。
まずは吹いてもらいます。
中音域と低音域でアンブシュアがガボッと変わります。でも改善策はこの時点ではさっぱりわかりません。
当たり前のことを疑ってみる
金管楽器で低音域用のアンブシュアを用意するっていわば「当たり前」。
でも、そこを疑ってみました。
「そんなにアゴ落とす必要ある?マウスピースを動かすことで代替にならない?」
戸惑いながらも試してくれます。ですがしっくりきません。次のプランを考えます。
「下アゴを落とすことで口の中を広くするんじゃなくて別の方法で口の中を広くできない?」
以前、ぼくが新しい吹き方に出会ったときに、低音用のアンブシュアを用意しなくても低音が鳴ることに気付いたんです。それも今までよりもはるかに少ない労力で明るく。
その低音のアプローチを彼に伝えました。
それで低音域方中音域の連結を試してみるととってもスムーズ!
でも彼はなんだかイマイチ心配そう。話を聞くと「これだとロングトーンがうまくいく気がしないし、緊張したとき戻っちゃいそう」と言います。
別にこれじゃなきゃいけないってことはないですよ。緊張したとき戻ってしまっても大丈夫。だって今までの吹き方で何年もやってきたんだから!
やっと彼の顔が少し明るくなりました。
できない前提で練習するもったいなさ
レッスンしていて気になることがありました。
それは、
「すごく楽に吹けるようになりました。でも・・」
「お、いい感じです。だけど・・」
今の時点で一歩進めたことを喜ぶ前に、まだ見ぬ先のことを心配しているんです。
心配があることはわかります。
でもこれからも上達して先に進んでいくために、まずは変化を感じ、しっかりと受け取ることってとても大切なんです。
試しに大きな声で喜びを表現してもらいました。
「やったー!」
ひとまずOK。
これから起こるかもしれないことよりも、まずは今起きていることを受け止める。
でもまだこれができてない。でももっとこうしたい。だけどこうなるかもしれない。真面目さ故、向上心故にこう思うんです。
でもまずは今を受け止めて。進んでいく。
できないことに取り組むことが練習?できちゃいけないの?
相手のチュービストは、何かがうまくいき始めると何度も何度も繰り返し吹いて確かめているんです。
まるで、吹けるようになったことがおかしいかのように。
不安だし自分を信じられていないのかもしれない。でも大丈夫。繰り返し繰り返す練習してやっとこさ手に入れるものばかりが「うまくなる」ということではないんです。
ちょっと周りを見渡せば選択肢はたくさんある。それが知れただけでもこの後見えてくる世界は変わります。いろんな選択肢をどんどん試していけば大丈夫です。
演奏には考え方のクセも大きく影響してきます。そこを少しずつほどいていくのもレッスンでは必要だとぼくは思います。
そんなこんなであっという間に時間が過ぎました。
おわりに
自分の中にはまだまだ自分の知らない可能性があって。それは走り続けなければ手に入らない遠くでなくて、すぐ目の前にあるかもしれない。
変われる自分に気付くと、もっともっと楽器が吹きたくなる。
前向きな気持ちをいつももって楽器と関わっていきたいですね。
それではまた。
後日レッスンアンケートに答えてもらいました。→ひとつひとつ話を聞きながら、試しながら進めてくれるので安心感がありました!!
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